HONMEMO

読書備忘録です。

人生はそれでも続く/読売新聞「あれから」取材班

過去にニュースで取り上げられた22人のその後の人生をたどるノンフィクション。

のぞき見的悪趣味かと躊躇うところもあったが、そうでもなく。

2012年9月から原子力規制委員会委員長も務めた田中俊一さんは、立場故に批判に晒されることも多かったように思うが、原子力を推進する中で安全神話への奢りがあったと責任を感じ、「困難な状況の中でも、村に戻ってもう一度暮らしたいという人の手伝いができれば本望」と考えて、飯館村に住む。中間貯蔵施設の除染土の他県移動が現実的には困難と考え、除染土の上に綺麗な土を被せて農業ができるようにする事業をすすめたり、椎茸への放射性物質がどの程度かを実際に実験、調査し、特産の椎茸栽培の復活を目指したり、また、イノハナ(香茸)の炊き込みご飯を食べ、食品規制基準が極めて厳しく設定されていることを伝えるなど、科学に基づく行動で、山林の活用による村の復興に貢献しようとする。

「ぶっ殺すぞ」と怒鳴りつけて自白を強要したことを公判で認めて退職した市川検事は、その後、刑事弁護士となり、日弁連の再審法改正に関する特別部会の委員ともなって、冤罪の防止に努める。

田中さんにしても市川さんにしても、反省に基づく誠実な生き方に感じ入る。