著者は同和出身者で著書に「日本の路地を旅する」という大宅壮一ノンフィクション賞作がある。本書はその延長という面もある。
四国遍路は、巡礼の道というほかに、故郷を追われた困窮者が最後に頼れる一種のセーフティネットのようなところがあり、辺土とも呼ばれた。ハンセン病患者の生きる途ともともなり、関係の史跡も多い。遍路道のそばに路地があることも多く、路地の人達がお接待をすることも多かった。
著者が出会う草遍路は、殺人未遂の犯罪者であったり、精神に問題を抱えてホームレスとなった人(ヒロユキ氏)であったりする。また香川県の路地出身者が関東大震災後の朝鮮人虐殺の風評の中で9人虐殺された事件を追ったりもする。
草遍路となって長く放浪するうちに自己肯定感を得られるようになったというヒロユキ氏のミカンを食べる穏やかな笑顔の写真に救われる思い。