「散るぞ悲しき」は積んであったような気がしたが、この作者結局一冊も読んでいない。
サガレンとは、樺太/サハリンの旧名で宮沢賢治がそう呼んだことにちなむ。日露混住の地から樺太千島交換条約によりロシア領に。その頃、チェーホフが詳細な旅行記をまとめている。日露戦争で南樺太は日本領に、第二次大戦後、全島ソ連領となる。陸上にある国境として南部樺太日本領時代は国境が目指すべき観光地となり、北原白秋や林芙美子なども訪れる。第一部は、鉄道、特に廃線好きという著者のサハリン鉄道紀行で、日露の歴史や文学者の足跡をたどる。
第二部は妹の死後その地を旅した宮沢賢治の詩などから、その心象に分け入る。
もっと日露の歴史の跡を詳細に巡るものかと思っていたら、文芸紀行に近いもので、私には肩透かしの感があったが、宮沢賢治に思い入れのある人には特に楽しめるものだろう。