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読書備忘録です。

ヒーラ細胞の数奇な運命/レベッカ・スクルート

研究のための組織提供におけるインフォームド・コンセントや組織提供者への金銭の提供のあり方は一筋縄で行かない問題のようだが、科学の発展のためならという論理だけでは済まなくて、何らか組織提供者を含む関係者に対する配慮が必要ではあるのだろう。

そういう科学と倫理の問題を考えさせる本でもあるが、本書の魅力は、色濃く残る黒人差別の中で満足な教育も受けられず、貧困のうちに育ったヘンリエッタの子供や家族の生活の実情や素朴な心情を詳細に描いているところだ。ドラッグに溺れ、強盗を働く者もいる一方、愛情深く向上心のあるデボラがチャーミング。