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読書備忘録です。

流れる星は生きている/藤原てい

 新田次郎の妻、藤原正彦の母である藤原ていによる満州からの引揚げを記したノンフィクション(あるいは私小説)。戦後のベストセラーだそうだ。ここ1年程で何だか急に涙腺が弱ってしまったようで、困ってしまう。中国からの引揚げやシベリア抑留などを描いた小説などはいくつか読んでいるけれど、この本も、戦争がどうだこうだよりも、極限状態に置かれた人間の生き様に触れて、教えられるところ、感じるところが沢山ある。きれいごとじゃ生きられない、エゴとエゴのぶつかり合いの中に、思いやりが交錯する・・・ただ、飢えや足の裏にめり込む石の激痛等も含めて、その苦難の実際は人には決して真に理解することはできなのかもしれない。
 当時2歳の頑是無い正彦ちゃんが、今や「国家の品格」を世に問うている。母は強し。本当に一歩間違えれば藤原正彦の著作を読むことはなかったのだ。著者は今認知症で療養されているやに聞く・・・感慨無量だ。

流れる星は生きている (中公文庫BIBLIO20世紀)

流れる星は生きている (中公文庫BIBLIO20世紀)


105円@ブックオフ