藤田嗣治といっても、私には、黒田清輝あるいは佐伯祐三、荻須高徳、小磯良平なんかと十把ひとからげにして「巨匠」というイメージしかなかったのだけれど、かつて全く違った負のレッテルを貼られた人だったということを初めて知った。パリのサロンでの奇矯な振舞い、戦争画への積極協力などは何ゆえのものだったのか、といったことが検証されていく。その業績は世界的に評価されていた一方で、日本からは捨てられ、フランスに帰化、フランスに骨を埋める・・・。大宅壮一ノンフィクション賞受賞。大宅賞受賞作って外れが少ない。
著者は、NHKのディレクターで、この本は、いわば藤田嗣治を題材としたNHKスペシャルの副産物らしい(といってはちと失礼か)。3月から国立近代美術館で藤田嗣治展が開かれる。戦争画も含めて生涯の作品が展示されるはじめての展覧会という。楽しみだ。こういうメディアミックスはいい。NHKスペシャルの再放送を是非!
- 作者: 近藤史人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/01/13
- メディア: 文庫
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