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読書備忘録です。

スローカーブを、もう一球/山際淳司

 早実と駒大苫小牧の熱戦があって、長いこと積んでいた本書を取り出して読んだ。最初の「八月のカクテル光線」は、甲子園の名勝負として名高い箕島対星陵の延長18回に至る試合に取材したもの*1。ラスト、敗れた星陵の選手達は9月になると車の免許を取って、クルマに乗って集まるようになるとあって、クルマのヘッドライトが表題の(甲子園の)カクテル光線と重なって終わるのだけれど、そういう筋よりも9月にみんなが免許をとりに行くということ自体が、野球以外のことをすべて犠牲にした青春の終わりを浮き彫りにしているように思えて、ある種の感慨を覚える。
 このほかにも、高校野球に題材をとった表題作やジャイアンツにドラフト外で入団してバッティングピッチャーとなる「背番号94」、有名な「江夏の21球」など、野球に題材を取ったもののほか、有名進学校で落ちこぼれ一人ボートでオリンピックを目指した男の話、ボクシング、スカッシュ、棒高跳び選手のエピソードなど、8つの短編を収める。
 文体はちょっと感傷的。スポーツものの回顧に似つかわしいと言えるのかも。

スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962))

スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962))


105円@ブックオフ

*1:今日の朝日新聞の朝刊に、当時の両校の監督を取材したコラムが大きく出ていた。