矢作俊彦って、全共闘世代のアイドル的存在なのだろうか?ちょっと前のこと、内田樹と高橋源一郎と矢作の3人での対談だか何だかがあって(まあ要するに酒を飲んだらしいのだけれど)、そのことを内田と高橋がそれぞれとっても嬉しそうにネット上で書いていて、そんなことを思ったのだ。
私が矢作俊彦のことを知ったのは比較的最近なのだけれど*1、なんといっても最終学歴キョーコマというのがカッコ良すぎだ。著書は本書のほかデビュー長編一作しか読んでいなくて、まあなかなかキザな感じと思っていたのだが*2、いつだったかNHKで矢作俊彦がヘミングウェイの足跡を辿るみたいな番組を見て、キザなんてもんに収まらない超弩級キザといったような不思議な感じを持っていた。そんな気になる作者の三島賞もとった話題作の文庫化ということで、早速に読んでみた。あ・じゃ・ぱんは文庫化されないのかなあ。
実際どうかは知る由もないけれど、作者がとっても楽しんで書いているような気がする。長嶋にバントをさせることを組織のための犠牲として称える日本社会ってなんなのさ。鉄腕アトムを、暴走する太陽を鎮めるために核融合制御爆弾を抱いて太陽に突入する「涙もろい十万馬力のカミカゼ特攻機」にするのは酷いじゃないか。アトムは、たった一人の少女を救うために、法を犯して海を越えたんだぜ?そして「彼」も海を越えて広州へと向う・・・。笑いながら「彼」は言う、「革命的敗北主義だ」。おいおい、やっぱしちょっとカッコ良すぎぢゃないか*3?
「彼」が密航した中国から30年ぶりに帰国して感じた、こうあるはずの日本と実際とのズレ、違和感が様々に描写されるのも、普段当然と思っていることを改めて見つめ直すようでなかなか面白い(その主役としてとりあげられるのが携帯電話と「女子高生」っていうことでもあるかな?)。
- 作者: 矢作俊彦
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/10
- メディア: 文庫
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