HONMEMO

読書備忘録です。

告白/町田康

(主人公熊太郎は父母の寵愛を一心に*1享けて育ちながら無頼者となり果てて)『あかんではないか』ではじまり、(神さんに向かって本当のことを言って死にたい、と思って自分の本当の思いを心の奥底に探ったのに、何らの言葉も、思いもなくて、涙あふれて)「あかんかった」で終わる悲劇です。このラストは涙なくして読めない悲劇ではあるのですが、熊太郎の思いを言葉でうまく伝えられないもどかしさやそれによって引き起こされる喜劇的なあるいは悲劇的な出来事が著者独特のユーモア溢れる疾走するような文体で丁寧に描かれていて、全体としては喜劇のようです。
朝日のゼロ年代の50冊第3位にも選ばれていますが、実際すばらしい作品だと思います。
文庫本だと850ページほどにもなり、分厚すぎて読みにくいのですが、章立てになっていないので、分冊にもできないのかもしれません。この文体には章立ては馴染まないのかなとも思いましたが、もとは新聞小説でぶつ切りだったことを考えれば、いかようにでもなるようにも思えます。どうでもいいことですけれど。
町田康のインタビューや選者のコメントを含むゼロ年代の50冊の本書についてのコラムを見つけた(4/24)。

告白 (中公文庫)

告白 (中公文庫)

*1:一身に?