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読書備忘録です。

日本の宿命/佐伯啓思

日本の戦後、近代化過程を論じる後半より、民主主義、政治過程に関する第3章までが面白い。
第1章「橋下現象」のイヤな感じの概略をメモ
民主主義には、議会制や政党政治、官僚制などと調和しつつ政治をすすめるという間接的で抑制的な民主政治と、国民の意思をできるだけストレートに反映させようとする直接民主主義がある。
戦後民主主義」は、民主主義とは、国民主権であり、民意の反映こそが民主政治だといった。しかし、このような民主政は、民意が必ずしも正しくないことから、ポピュリズムを経て衆愚政治へと落ち込む。そして議会政治の機能不全から、大衆の不満を背景に、「民意」を実現するという事実上独裁的な力を持つ政治家を生む。
「民意」とは内容空疎なフィクションに過ぎない。「民意」の反映から出発すると、議会審議や官僚制は面倒なものになる。しかし、今日の複雑な社会における民主政治は、この面倒で時間のかかる手続きを通して行われる以外にない。

日本の宿命 (新潮新書)

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