HONMEMO

読書備忘録です。

不安定化する世界/藤原帰一

2011年から10年間にわたり朝日新聞に掲載された時事評論をまとめたもの。

原発事故直後のコラムでは、原発反対、推進の二者択一の中で、その危険性をどのように削減するかという政策課題が忘れられていることになぞらえて、核抑止に寄りかかる政府と軍縮交渉を切り離した核廃絶を求める平和運動に分裂した構図からは具体的な政策プロセスとしての軍縮を実現する手がかりが見えてこないと警鐘を鳴らす。

他の多くの論考もそうだが、教条主義的、硬直的な議論を戒める現実的思考が好ましい。

 

-「私は、戦争を全て否定すれば解決になるとは思わない。…全ての戦争を否定できないからこそ、要らない戦争は絶対にあってはならない。」(イラク戦争は要らない戦争だったが、ボスニア・ヘルツェゴビナにおけるNATOの攻撃やリビアへの介入は必要だった。ただ、リビアなど破綻国家となる危険は実在する。武力行使の効果を過大評価することは危険。)

 

- 安倍外交が成功しているとは思わない。ではどうするか。他の国を操作する手段が乏しいのであれば、他国も賛同せざるを得ない枠組みを示し、多国間の協力を発展させることだ。それこそが世界各国から信頼される日本への選択である。

 

日中韓、日米はじめ、国際政治を考えるときの視座について示唆するところ大きい。