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読書備忘録です。

聞き書緒方貞子回顧録/緒方貞子 野林健・納家正嗣編

緒方貞子のオーラルヒストリー。初出は2015年。

国連難民高等弁務官、JICA理事長として活躍されたことは無論知っていたが、その具体的な人となりや事績を知ると、そのあまりの大きさに圧倒される思いがする。

本書と並行して読んだ「悩んでも迷っても道はひとつ」の村上一枝氏の現場主義と緒方貞子氏の現場主義は、視点の位置は異なるが、現場を知らずして的確な支援はできないという厳しい認識は同じで、支援される側の立場に立って、必要なら既存のルールも変えるという態度も共通する。

人道問題解決には、政治的・軍事的なコミットメントが不可欠であるというリアリズムを踏まえて行動するところが氏の真骨頂であり、人道支援と開発援助をシームレスに実施する「人間の安全保障」というビジョンにつながっている。

今後の日本社会については、重要なのは世界の多様性をしっかりと認識するとともに、国内でも多様性を涵養していくことであり、そのことが日本に活力を与え、閉塞感を打破することにつながると指摘する。多様性の認識の深まらない日本はなお閉塞感の中にあるようだ。