「スタンス・ドット」「イラクサの庭」「河岸段丘」「送り火」「レンガを積む」「ピラニア」「緩斜面」の計8編の連作短編。
この人の小説は本当にいい。何かここに書くとその余韻を損なってしまうような気がする。池澤夏樹の解説もいい(ホントそうだよって思える。)。
スタンス・ドットの最後の一文。長い…(230字くらいってことは原稿用紙半分に句点なしってことか。)
だがリリースの瞬間、指がへんなぐあいに抜けて青年そっくりにボールをレーンにたたきつけるような投げ方になり、にもかかわらずレーンに落ちる音がすうっと立ち消えてボールはくるくると滑りながらスイートスポットにたどり着き、あとひと息というところで古いピンの音がガンゴーンガンゴーンといっせいに鳴りはじめ、それが聞こえない耳の底からわきあがる幻聴なのか現実の音なのか区別できぬまま、たち騒ぐ沈黙のざわめきのなかで身体を凝固させた彼の首筋に、かすかな戦慄が走った。
- 作者: 堀江敏幸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/07/30
- メディア: 文庫
- 購入: 9人 クリック: 56回
- この商品を含むブログ (142件) を見る
380円@都心の本屋さん