HONMEMO

読書備忘録です。

漂泊の牙/熊谷達也

 厳しい自然の中で主人公はオオカミをどのように追い詰め、またオオカミはどのように逃げるのかといったシンプルかつ緊迫感のある小説というのを勝手にイメージしていたこともあって、TVディレクター恭子の筋はまだしも、ヤクザ殺人のミステリーにまで広がったことで、エンターテインメントとしての幅は広がっているということかもしれないけれど、俗な感じの小説になってしまったという印象を受ける。まあ、人の作品をカバー裏解説か何かで勝手にイメージして読むほうが悪いんだけど。
 新田次郎文学賞受賞作だそうだ。新田次郎賞ってほかにどんな本が受賞しているのか、あとで調べてみよう。
 「まほろばの疾風」は、高橋克彦「火怨」に及ばないなぁと思い、本作ももう一つって感じではあったけど、基本的には好きな作家だ。「相克の森」、「邂逅の森」に大いに期待(早いところ文庫化を!)。

漂泊の牙 (集英社文庫)

漂泊の牙 (集英社文庫)