HONMEMO

読書備忘録です。

おいしいものでできている/稲田俊輔

食にまつわるエッセイは星の数ほどあるけれど、本書の楽しさはピカ一だ。
取り上げられる料理は月見うどんやサンドウィッチ、カツカレーなどなじみのものばかり。
それぞれについての著者のこだわりや視点が、押しつけがましくなく綴られる。なんというかdecentな語り口とでもいうか。
「グルメ」というのは、おいしくないものを食べるのが嫌いな人、もっと言えばそのおいしくないものの範囲が極端に広い不幸な人なのではないかと著者は考える。しかし、世界はおおむね「おいしいものでできている」。そのことに気づいたら、日々の生活はきっともう少しだけハッピーなものになるのではないか、と。嫌いであると宣言するカツカレーに対しても愛情を感じるのはそんな考え方が小文に通底しているからだろう。