明治初頭生まれの長岡藩の家老の娘のメモワールです。武士の娘として厳しく育てられますが、貿易商と結婚して渡米、二人の女の子を授かります。このころの異文化ショックと言うのは現代では考えられないほどであることは容易に理解できるのですが、現代人の眼から見ると、米国人より当時の日本人の感覚にむしろ違和感を覚えるというところに、日本文化の断絶をみて、考えさせられるところがあります。
著者はその後夫と死別、帰国しますが、米国育ちの娘たちが「異文化日本」に適応しつつも、米国に帰りたいという気持ちに触れてどまどい、米国に戻ることを決断します。ある意味このようにして日本の武家の文化は西洋化の流れの中で失われていったのだろうなと思わせるものがあります。
英語で書かれたものの翻訳ですが、翻訳とは思われない、品のよい文章です。
ずいぶん前のNHKの週刊ブックレビューで桜庭一樹が薦めていたのを見て手に取りました。
- 作者: 杉本鉞子,大岩美代
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1994/01
- メディア: 文庫
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