砂漠の駅に3日ほどたった一人で足止めをされて、主人公ジョーンは自らを見つめることになる。そして、自分は、実は、自ら信じて疑わなかった、夫からも子供たちからも、そして誰からも愛され、信頼されているような人間ではないのではないかと気づく。そして、家に帰ったら夫に詫びてやり直そうと思うが、結局そうは出来ず、何もなかったかのような生活が続くこととなる。
自己を客観的に見ることは難しい。自分は、自分が思っていたような(まともな)人間ではないということにハッと気づいて愕然とするという経験は、とても恐ろしいものだ。
恐ろしいから、何もなかったかのように振る舞わないと生きていけない。解説の栗本薫は、このような態度を怠惰と怯懦のためとするが、そのように言える人は強い。