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読書備忘録です。

もうすぐやってくる尊皇攘夷思想のために/加藤典洋

- 明治期、尊皇攘夷思想は、尊皇開国思想への集団転向によって隠蔽された。1930年代の皇国思想の激発は地下に潜っていた幕末の尊皇攘夷思想の噴出であり、2010年代の「(安倍政権下の政治・社会的)後退」は、臭いものとしてフタをされた皇国思想の噴出であると。

- ヤスパースの、全体主義が自由を破滅させようとする場合には原爆も許容されるという考え方は、戦後日本の絶対平和主義の心理、論理と大きく異なる。これは、日本の戦争体験は、ヤスパースの「生への決意性」(死よりも生を選ぶ)という場面をもたなかった、むしろ気づいたら生き残っていたという「生の偶有性」の体験であることによるのではないか。

- にっちもさっちもいかない状況を生き抜いたあとに、どのような既成の罪にも該当しないのに、生き残ったということから罪の感覚が生まれる(形而上的罪)。 これがヤスパースの哲学思想の次の展開へつながるものではないか。

 

もうすぐやってくる尊皇攘夷思想のために

もうすぐやってくる尊皇攘夷思想のために

 

 

 

大衆の幻像/竹内洋

- 大衆の原像という吉本用語

- 「大衆」天皇制、大衆高圧釜社会、大衆御神輿ゲーム

- 引き下げデモクラシーの常態化、劣情デモクラシー

- 大衆迎合が自己目的化した超ポピュリズム

- 受託者型代表から委託者型代表へ。政治家の非知性主義の蔓延

- 「政治的適切さ」コードを上回る「テレビ的適切さ」に沿った定型話法のテレビ文化官僚

 

大衆の幻像

大衆の幻像

 

 

 

「日本人」という病/河合隼雄

標題はやや的外れ。「私抜き」の自然科学の知の限界、「私の(一人称の)死」といった私との関係での宗教、神話の重要性。

 

「日本人」という病 (静山社文庫)

「日本人」という病 (静山社文庫)

 

 

 

量子革命/マンジット・クマール

 

量子革命: アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突 (新潮文庫)

量子革命: アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突 (新潮文庫)

 

 

 

「日本の伝統」の正体/藤井青銅

伝統というか、物事の起源を調べた本。

文体が趣味でない。

 

「日本の伝統」の正体

「日本の伝統」の正体

 

 

 

保守の真髄/西部邁

- 必要なのは、理想を内包する現実であり、現実に裏付けられた理想なのである。つまりここでも、理想と現実の間の平衡が要求されるのだ。その平衡に抽象名詞を与えてみれば、自由と秩序の平衡はバイタリティ(活力)、平等と格差の平衡はフェアネス(公正)、博愛と競合の平衡はモデレーション(節度)、そして合理と情操の平衡はボンサンス(良識)ということになろう。国家のノーム(規範)のスローガンは活力、公正、節度、良識の四幅対だということになる。

- ハイブリディティゆえのコンプリヘンシヴネスによって特徴づけられる日本文化は、それらを統合するプリンシパルへ向けての思索と討論が不足するなら分解するほかない、という危険につねにさらされてきた。

- 日本的なるものを捨てる方向に少しずつのめり込んでいったのが大日本帝国、そういうものが滅亡するのもまた宿命的な成り行きであったと言わざるを得ない。つまり文明の紊乱において戦前と戦後は(屈折はしているものの)連続しているということである。

- よき民衆政治がありとせば、それは「民衆制が危険きわまりないものであると疑う者たちによる民衆制」しかない。

- 選挙民の政策についての判断力はせいぜい立候補者の大まかなプラットフォーム(公約)についての審判にとどまる。マニフェスト選挙は机上の空論である以上に、直接民主制によって間接民主制の機関たる議会を有名無実と化し、さらには代表者を選ぶ選挙をすら無意味にする。

   政策の具体策についてまで選挙民が介入するのは越権行為も甚だしい。議会の決定が気に入らないなら、次の選挙で別の代議士を選ぶしかない。それが筋道というものだという意味で代議制は時間と費用のかかる制度なのである。

- 役人は選挙の洗礼を受けない半政治家であるといってもよい。というより、選挙によって言動を過度に左右されにくい役人があればこそ、国策における一貫性が可能となる。その意味において政治は選挙というより落ち着きのない制度から半ば自由になっておれるのである。

- 構造という言葉は歴史的に形成されてきたった物事の在り方のことを指す。つまり、時間と費用をかけて少しずつしか変えられないし、また変えてしまっては単なる破壊に終わってしまう。

   平成改革にあっては、急進的大変革がよしとされた。その革命主義が政官財さらにはマスコミ界の意識に広く浸透したことが問題なのである。その初めから失敗を予定されているイデオロギーのせいで、平成期の日本国家はおのれの屋台骨を自壊させてしまった。

- 国柄は作るものでなく、成るもの。→改憲でなく、廃憲。成文憲法を作らなければならないというのは、不安神経症者に特有のもの

 

 

 

オリバー・ストーン オン プーチン/オリバー・ストーン

-「 今必要なのは、新たなパラダイム、国家間の関係構築に対する新たな理念への移行だと思う。新たなパラダイムは、他国の利益、他国民の主権を尊重する姿勢に基づくものでなければならない。」

 

いろいろと割り引いて聞く必要があるもの、あからさまなポジショントークもあるのであろうが、西側言説をそのまま受け止めることは危険だろうと改めて認識。

プーチンは思いのほかまとものように思える。

 

オリバー・ストーン オン プーチン

オリバー・ストーン オン プーチン