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読書備忘録です。

日本人の勝算/デービッド・アトキンソン

人口減少が進む中で、経済成長を続けていくためには、生産性を上げるしかない。そのためには、最低賃金を継続的に引き上げ、人材育成トレーニングを強化し、所得を増やすとともに、企業規模を拡大して、高付加価値・高所得経済を目指すべきと。

最低賃金について言えば、これが、福祉政策の位置付けとなっていることも最低賃金の引き上げの障害となるものであり、経済政策として位置付けるべき(経産省所管とすべき)とか、失業が増えるかは引上げ率や労働の質(人材評価の高さ)などにもより、必ずしも失業が増えることとはならず、生産性の向上に資するものだといった指摘が多くの論文の分析の下でなされている。

 

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

 

 

 

統計学が最強の学問である/西内啓

今更読むベストセラー。

素人にはやや難解なところもあるが、挑発的な文体も含めてなかなか面白い。エビデンスとして最も信頼できないものは、「専門家の意見」と「基礎実験の結果」だというのは、まさにまさに。

自分の頭で考えようとするときにこのような統計知識がないと判断を誤ることになる。また、著者の言うとおり、ビジネス、社会、政治などあらゆる分野で、経験と勘に頼る不毛な議論を終わらせるために、統計リテラシーの向上は大事。

 

統計学が最強の学問である

統計学が最強の学問である

 

 

 

創造するということ/宇野重規・東浩紀・原研哉・堀江敏幸・稲葉振一郎・柴田元幸・中島義道

サブタイトルに続・中学生からの大学講義3とあり、桐光学園+ちくまプリマー新書編集部・編となっている。7人による講義録の体裁だが、5編の初出は「私がつくる物語」、2編は別々の本から取られていて、再編集されたものとある。大学講義1を見ればわかるのだろうが、成り立ちがよくわからない。ま、どうでもいいのだが、この人たちの講義を受けたのなら、なんと幸せなことか。

どの講義もハズレなし。

 

 

 



リバタリアニズム/渡辺靖

リバタリアニズム自由至上主義は、公権力を極限まで排除し、自由の極大化を目指すもので、リバタリアンの思想的位相を示すものにノーラン・チャートがある。

本書で示された図がわかりやすいが、x軸に経済的自由を重視する、軽視するを、y軸に個人の自由を重視する、軽視するを取ったときに、第1象限(x,y共に重視)に入るのがリバタリアン、第2象限がリベラル、第3象限が権威主義、第4象限が保守となる。(なお、リバタリアン権威主義は、右派、左派それぞれにあり得る。)

ただし、実際の考え方、行動には、かなりの幅がある。

 

 

 

 

 

感情化する社会/大塚英志

感情化する社会とは、理性や合理でなく、感情の交換が社会を動かす唯一のエンジンとなる社会。

生前退位についての天皇の「お気持ち」表明と国民の圧倒的共感はまさにそれを示すもので、アダムスミスの言う中立的観察者を失っている。「お気持ち」は、天皇による憲法天皇条項の解釈であり、(個人としての)政治的発言であるが、感情としてのみ受けとめられ、その解釈についてはスルーされた。天皇は、憲法を倫理や規範として生きようとしたが、国民は感情としてしか天皇の問題提起を受け止められなかった。

天皇感情労働(感情を汲み取り続ける行為)から解放すべき。

 

このほか、SNS参加は無償労働とか。文学論は、興味深いところもあるが、私の関心の外側に近い。

 

 

感情化する社会

感情化する社会

 

 

 

桜の科学/勝木俊雄

サクラの不思議、`染井吉野' の真実、桜と日本文化の3章立て。

著者は、クマザクラを発見した森林総研の研究者。桜のやさしい植物学、分類学から桜にまつわる文化的なエピソードまで。桜に対する情熱がひしひしと。

オールカラー、多くの写真が美しい。

 

 

 

 

朝日ぎらい/橘玲

朝日新聞購読層のような「リベラル」、世界標準のリベラル、保守、ネトウヨなど、政治思想と具体の政治スタンスの成り立ち、動向などをわかりやすく説明。リベラル化が世界的に進む中で、若者にそっぽをむかれる既得権益護持の(朝日的)「リベラル」の行く末は。