開高健って、恥ずかしながらはじめて読む。私が生まれる前に上梓された芥川賞受賞作「裸の王様」など4つの短編集。表題に取られている2編がとてもいい。
「パニック」は、鼠の大発生によるパニックの中での小役人の主人公の、まさに「人間」が描かれている。人間って複雑なもの。キャラクターがたっていて面白いというように言われる小説があるけれど、そういうのって、性格を単純化してあるいはデフォルメして、分りやすくしているってところがあるのだけれど、本当はそういうもんじゃないんだよな。複雑なところにいろんな味があるもの。*1
「裸の王様」は、カバー裏で「打算と偽善と虚栄に満ちた社会でほとんど圧殺されかかっている幼い生命の救出を描く」とあるのだけれど、そういう面と併せて「芸術」とは何かってことを問いかけてくるところもある。
開高健って、もちろんただの釣り好きのおっさんだとは思ってなかったけど、やはり良かった。今年はいくつか読みたい。
- 作者: 開高健
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1960/06/28
- メディア: 文庫
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*1:小役人ということでは「県庁の星」なんてのが売れてるみたいだけど、宣伝文句をみる限り読むだけムダというか世も末って感じだわな。読まずにほざくなではあるのだが。