HONMEMO

読書備忘録です。

空へ/ジョン・クラカワー

難波康子を含む6人の死者を出したエベレストでの遭難事故の同行ジャーナリストによる詳細な記録。盛んになり出した商業的な公募隊の問題点をレポートするという目的があったが、著者は、参加した営業公募隊のメンバーの能力を評価し、資格不十分な者はむしろ従来型の非営業遠征隊の中にいると評している。それでも本書は公募隊批判を巻き起こしたようで、解説の石川直樹は公募登山の必要性を強調する。

山岳遭難ものは小説も含めて何冊か読んでいるが、極限状況での人間ドラマに心動かされる。

同時期に登頂した日本隊が瀕死のインド隊(3人死亡)を見捨てて登山を強行したという批判が巻き起こったが、その際、日本隊の一人は「8,000m以上の高度は、道徳を云々できる場所ではない」と語ったという(後にインド隊を見捨てた事実はないとされる)。真偽、善悪は別として、体力も思考能力も奪われて、そのような言葉も一瞬肯なるかなと思わせるような極限状況ではある。