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読書備忘録です。

さらば欲望/佐伯啓思

リベラルなデモクラシー、グローバルな競争原理、個人の基本的人権等の米国を中心とする西洋的価値や世界秩序構想が破綻。社会主義も破綻したことから、隠れていた「精神的な風土」が表出してくる。ロシアは西洋近代から圧倒的影響を受けつつ「ロシア的なもの」を模索してきた。

日本は、親米、グローバル競争路線だったが、より大きな社会構想が必要になっている。グローバルな競争原理といった米国流の価値は、日本の価値観や道徳感と必ずしも一致しない。ゴーンはおかしいというのが日本の道徳観。

コロナ禍が炙り出したのは、自分の命は自分で守るという自立の基本すらなく、一方で古人の「無常」といった死生観も持ち合わせない日本人だ。

「民意亡国論」は、まさにそのとおりなのだが、民意至上主義がここまで深く浸透しているとどうすればいいのかと呆然とする。まさに亡国の道を転がり落ちているようだ。

その他いくつもの大事な論点が指摘されている。

佐伯啓思は久方ぶりに読んだが、論旨に納得することばかり。