嗜眠性脳炎の後遺症としてパーキンソン症候群を発症することがある。その特効薬であるドーパミン前駆体L-DOPAの投与についての臨床研究の記録。
同薬の投与は、パーキンソン症候群の症状を目覚ましく軽減、改善するが、その後、舞踏病、チック、過度の興奮、躁、破滅的な精神の動揺といった「副作用」という概念を超える激烈な症状を発症する。投与量のコントロールがままならず、投与量を少なくし、あるいはやめても投与前よりも事態が悪化することもしばしば。
しかも、その効果に再現性はないといってよく、20人の患者の症例が紹介されるが、一人として同じ経過をたどる者はいない。
一旦は改善し、喜んだのちに地獄を見るというのはあまりに辛い体験であろう。その可能性が否定できない中で、その薬に頼らざるを得ない(総じてみれば改善されるというが)というのもまた悩ましい。
読むのもなかなか辛い。
本書をもとにした映画は、ドラマティックな脚色がされているようだが、ロバート・デ・ニーロ、ロビン・ウィリアムズらの真摯な役作りなども含めて、著者は高く評価している。