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読書備忘録です。

この国のかたちを見つめ直す/加藤陽子

加藤陽子による2010年頃から2021年までの時事評論。

記録を残し、検証可能性を高め、歴史に学んで政策判断に過ちなきを期すことの重要性は、特に現下の情勢ではいくら強調しても足りないだろう。歴史学者からみればなおさらだ。

先の大戦は、自国のみを利する閉鎖的な地域秩序を東アジアに敷くことで、1930年代の経済危機と軍事危機を克服しようと図った我が父祖らの基本的な社会秩序構想=憲法が、英米側のリベラル・デモクラシーの国々の軍事力によって打倒されたことを意味する。ぎりぎりの最終盤で日本は、憲法を書き換えることを選択し、戦争は終結した。

新型コロナウイルスをめぐる国の対応ぶりを回顧するにつけ、…戦後に生まれた社会契約の機能不全が世界各地で見られるようになった。」そして、国家の再生が必要となる時、人は歴史の真実を省みる。本書は、これを「言葉」から探ることを目指したと。

憲法改正は、日本人を含め数多の人が亡くなったことを踏まえて行われたものという歴史、その後の日本社会は米国の価値観、グローバリズムに従ってきたという歴史、国のかたちを問う時、「歴史の真実」の評価こそが問われる。