HONMEMO

読書備忘録です。

幸福の増税論/井手英策

筆者は、2020年までの期間限定で政治をやるとして、旧民進党(前原誠司?)のブレーンとして活動もしているようだ。

本書の構想は興味深いのだが、日本人・社会の思考回路、心理構造を根底からひっくり返して、本書でいう頼りあえる社会を実現する道筋はなかなかに難しいだろう。

そのような社会の実現は、リベラルのサイドから、基礎自治体NPOなど草の根からの取組、理解を積み上げていくという地道な努力が必要なのだろうが、ベーシック・サービスの提供とそれに伴う負担増という方向は、それがあるとすれば、むしろ(田中角栄のように)保守政治家によって実現をみるのではないか。

野党(リベラル)が、増税を掲げて政権を取るという道は余りに非現実的に思える。

 

幸福の増税論――財政はだれのために (岩波新書)

幸福の増税論――財政はだれのために (岩波新書)

 

 

 

日本画とは何だったのか/古田亮

もう少し日本画に造詣が深いとより興味深く読めるのだろうが。

図版も結構多くて良いが、こういう本には索引が欲しい。

 

日本画とは何だったのか 近代日本画史論 (角川選書)

日本画とは何だったのか 近代日本画史論 (角川選書)

 

 

 

アドラー心理学入門/岸見一郎

アドラー心理学をもとにした処世術指南本といった趣

 

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

 

 

 

戦禍のアフガニスタンを犬と歩く/ローリー・スチュワート

2002年初頭、休暇中のイギリス外交官が、タリバン政権崩壊直後の冬のアフガニスタン中部山岳地帯をヘラートからカブールまで、徒歩で(途中から犬を連れて)横断した記録。

著者は、ゲストとして泊めてもらうこととなる人々、道で出会う人々が、宗派、部族も異なり、経験してきたことも様々であり、近代西欧の価値観とは全く異なる多様な価値観を持っていることを身をもって確認していく。

著者は、旅が終わる頃、ハザラ族のリーダーに、結局まだハザラ族が理解できていない、どうしたら理解できるかと尋ねる。リーダーは、コーランの一節を読む。「不信心者よ、あなたが崇拝するものをわたしは崇拝しない。/わたしが崇拝するものをあなたは崇拝しない。/…/あなたにはあなたの、わたしにはわたしの信仰がある。」

著者は言う。「アフガンの多様な経験を理解するのに必要な時間、想像力、粘り強さなくしては、政策立案者たちはいずれ、自分たちの望む方法でアフガン社会を変えるのは不可能だと発見することになるだろう。」

本書の美点は、とんでもなく厳しい、危険と背中合わせの冒険旅行を極めて淡々と書いていることだ。そのことが上記のような主張を説得的に語ることにもなっているし、最後の犬のエピソードを際立たせる。

 

戦禍のアフガニスタンを犬と歩く

戦禍のアフガニスタンを犬と歩く

 

 

原書は2004年、翻訳が2010年に出ているものだが、今でも読む価値がある。

 

殺人犯はそこにいる/清水潔

取材力に敬服する。

一方、このような気合の入った(思い込みいっぱいと取られても仕方ないような)取材の仕方は、警察庁にハッパをかけられた県警の捜査と同様の危うさを孕むように思える。

少なくとも表現の仕方としては、告発すべきは告発すべきとして、もっと冷静な筆致がわたしは好きだ。

 

殺人犯はそこにいる (新潮文庫)

殺人犯はそこにいる (新潮文庫)

 

文庫でなくソフトカバーで読んだ。