HONMEMO

読書備忘録です。

エッセイ

そうか、もう君はいないのか/城山三郎

先に逝った妻との日々を綴ったエッセイ。著者の死後発表されたもの。娘さんによる城山三郎死去までの氏の様子を綴った文章もまた涙を誘う。 解説は児玉清。氏も鬼籍に入った。 そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)作者: 城山三郎出版社/メーカー: 新潮社…

東京震災記/田山花袋

関東大震災直後の田山花袋のエッセイ、ルポ。もうひとつピンとこない。安政の大地震の経験がすっかり忘れられているという話が深められることはなく、遷都論に話が飛んでしまう。今日また墨田区など危険地域だという報道があったけれど、地権の問題もあって…

神谷美恵子日記/神谷美恵子

「生きがいについて」を読んで、著者の日記も読みたいと思ってから何年になるか。 「生きがいについて」を書く人は、このように意志強く自らを奮い立たせる人であり、家族を思う人であるのだなと。心の持ち方の次元が違う。ただただ感じ入るのみ。 神谷美恵…

日本ぶらりぶらり/山下清

放浪の画家とか、裸の大将とか呼ばれた山下清の放浪記。といっても、有名になってから後見人とも言うべき式場某氏らと行った取材旅行の際のものが多いので、放浪記というよりは旅行記。式場氏によるあとがきによると、文章も式場氏による手が入っているもの…

清貧の思想/中野孝次

20年前のベストセラー。バブルが崩壊して、こういう本が読まれるけれど、モノの呪縛を解くのは容易ではなく。 いずれ徒然草をゆっくりと。西行も。 清貧の思想 (文春文庫)作者: 中野孝次出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1996/11メディア: 文庫購入: 3人 ク…

新・堕落論/石原慎太郎

まあ想定の範囲内というか。福永武彦「草の花」を評価していて、ちょっと意外。福永武彦は学生の頃いくつか読んで、好きだったけれど、すっかり忘れている。 新・堕落論―我欲と天罰 (新潮新書)作者: 石原慎太郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/07メディ…

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか/町山智浩

日本のメディアが伝えないアメリカの変な現実を拾ったコラム(本書前書から)。時事、映画、政治、東スポ的なネタなどなどを独自の視点で切り取っていて、刺激的。 キャプテン・アメリカはなぜ死んだか (文春文庫)作者: 町山 智浩出版社/メーカー: 文藝春秋…

「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか/小池滋

表題作のほか、 電車は東京市の交通をどのように一変させたか 田山花袋「少女病」 荷風は市電がお嫌いか 永井荷風「日和下駄」 どうして玉ノ井駅が二つもあったのか 永井荷風「墨東綺譚」 田園を憂鬱にした汽車の音は何か 佐藤春夫「田園の憂鬱」 蜜柑はなぜ…

東京瓢然/町田康

町田康によるぶらり旅エッセイ。 「汚れちまった六根に今日も栄螺の降りかかる。」とか、 なぜか一本足りなかった串カツへの拘泥とか、 ぐふふ、わはは。 東京飄然 (中公文庫)作者: 町田康出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2009/11/24メディア: 文庫購…

腹の虫/中川一政

昭和50年に日経に連載された私の履歴書に加筆したもの。履歴書にしては一風変わっていて、生い立ちなども書かれてはいるものの、ほとんどが芸術論です。短歌に飽き足らずに画の世界にはいったというのも肯なるかなというあじのある、また、まさにその絵画そ…

小さな手袋/小沼丹

これも手にしたきっかけを忘れていますが、堀江敏幸が言及していたのだったか…。師の井伏鱒二、庄野潤三、木山捷平との交遊や庭の植物のことなどなど、さりげないユーモアが楽しい。表題作は、掌編小説のようでもあります。 小さな手袋 (講談社文芸文庫―現代…

海山のあいだ/池内紀

ドイツ文学者による登山などの紀行文や生い立ちの記風のもの、掌編小説のようなものなどを収録した初出1994年の講談社エッセイ賞受賞作です。 海山のあいだ (角川文庫ソフィア)作者: 池内紀出版社/メーカー: 角川書店発売日: 1997/06メディア: 文庫この商品…

生物学的文明論/本川達雄

「ゾウの時間 ネズミの時間」の著者がNHKラジオで講演した講演原稿を本にしたものだそう。 閉経以降の生は生物学的にみると存在する根拠のない、技術の作りだした人工生命体というべきものだ。だから、老後においては、次世代のために働くことを広い意味での…

わたしの旅に何をする。/宮田珠己

椎名誠系(といってもずいぶん違うけれど)の旅エッセイ。独特のユーモアを素直に楽しめるかどうかで評価が割れそうです。 わたしの旅に何をする。 (幻冬舎文庫)作者: 宮田珠己出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2007/06メディア: 文庫購入: 12人 クリック: 31…

昭和天皇のお食事/渡辺誠

宮内庁大膳で天皇陛下の食事や修行の日々の記録です。陛下の日常の食事は庶民のものとそんなに変わりませんが、作り方は相当に変わっています。サンドイッチの作り方などびっくり。 昭和天皇のお食事 (文春文庫)作者: 渡辺誠出版社/メーカー: 文藝春秋発売日…

ちょっとピンぼけ/ロバート・キャパ

著名なカメラマンによるルポ、というよりはエッセイです。多くの面前の死、生死の瀬戸際にある緊張感の中にあって、著者のユーモアあふれる言動が、生きているということを際立たせているようにも思います。 ちょっとピンぼけ (文春文庫)作者: ロバート・キ…

猫にかまけて/町田康

町田康と猫は親和性が高いイメージがあります(パンクと犬は似合わない)。「この猫エッセイがすごい」というのがあれば、ノラや(読んでいないのですが)などとともに、上位にランクされることでしょう。 猫にかまけて (講談社文庫)作者: 町田康出版社/メー…

「ニッポン社会」入門/コリン・ジョイス

イギリス人記者がユーモラスに日本社会を語っています。日本人は、というか、私はというべきかもしれませんが、外国から日本がどう見られているかということが気になるのですね。楽しい本です。 「ニッポン社会」入門―英国人記者の抱腹レポート (生活人新書)…

活字たんけん隊/椎名誠

活字4部作の1作とか。いかにもシーナさんオススメのものらしいノンフィクション系の本がずらりと並んでいます。 旅行、探検(?)をしながら、このような本をどっさり読む生活というのは、私からすると別世界でやはりちょっと羨ましいです。 活字たんけん隊―…

読書の腕前/岡崎武志

本書でいうところの本よりも面白い「本の本」の典型ですね。著者の本・読書との付き合い方が様々な側面から語られますが、あるいは共感し、あるいは賞賛し(あきれ)ながら、楽しく読みました。巻末に言及書籍タイトルや作家名の索引があると嬉しいのですけ…

建築探偵の冒険/藤森照信

看板建築、東洋キネマ、東京駅、皇居、横浜ニューグランドホテルなど(マッカーサーゆかりの建物)、聖路加国際病院、建築家デ・ラランデ、パトロンとしての渋沢栄一などをめぐるエッセイ。路上観察学会のノリで楽しい読み物です。上梓されてから15年、街が…

シズコさん/佐野洋子

母と娘の関係というのは、子供が独立してからも比較的密接な関係を継続するちょっと特別な親子関係ではないかという気がします。母シズコさんをずっと嫌いだったという佐野洋子が、そんな母に対する感情、母娘の関係を赤裸々に綴っています。母を許せるよう…

打ちのめされるようなすごい本/米原万里

米原万里の書評集です。 亡くなる直前、「癌治療本を我が身を以て検証」として数多の代替療法に関する本を読んで試しているのが(米原万里のような知性でも、そんな怪しげなものまで試そうとするようになるのかと)身につまされます。 面白そうだと思った本を…

せきれい/庄野潤三

エッセイというよりは日記文学という感じです。以下、カバー裏から。 四季を彩る庭の花、賑やかな鳥たちの訪れ、食卓をにぎわす旬のもの、懐かしい歌とピアノの音色、善き人々の去来…。変わらぬものと変わるもの。静かだけれど本当に豊かな暮らしがここにあ…

若者のための仕事論/丹羽宇一郎

この手のビジネス本はほとんど読まないのですが、ひょんなことから、若者でもないのに読んでみました。やや古いフレーズですが「想定の範囲内」というか、まあ私くらいの年のものからみれば極めて陳腐な印象です*1。 負けてたまるか! 若者のための仕事論 (朝…

春宵十話/岡潔

手元にないので確認できませんが、藤原正彦「国家の品格」に影響を与えた書でしょう。はしがきの冒頭が、「人の中心は情緒である。」ですから。わたしは科学者の書くエッセイが好きですが、本書は思い込みが強すぎる感じに辟易してしまいました。以下若干引…

武士の娘/杉本鉞子

明治初頭生まれの長岡藩の家老の娘のメモワールです。武士の娘として厳しく育てられますが、貿易商と結婚して渡米、二人の女の子を授かります。このころの異文化ショックと言うのは現代では考えられないほどであることは容易に理解できるのですが、現代人の…

回送電車/堀江敏幸

様々な媒体に発表された小文を集めた散文集です。回送電車は、堀江敏幸の文学の理想であると。 特急でも準急でも各駅でもない幻の電車。そんな回送電車の位置取りは、じつは私が漠然と夢見ている文学の理想としての《居候》的な身分にほど近い。評論や小説や…

衆愚の時代/楡周平

近所の本屋さんにて立ち読みで読み切りました。失礼。 今のメディアなり政治家の振る舞いをみれば、何のためらいもなく「衆愚の時代」とレッテルを貼ることができるでしょう。愚痴ってどうなるものでもないですけれど、どうすればよいのかもよくわからないで…

全ての装備を知恵に置き換えること/石川直樹

冒険家のフォト・エッセイです。星野道夫的なものを勝手に期待していましたが…。写真は素敵ですけれども。 全ての装備を知恵に置き換えること (集英社文庫)作者: 石川直樹出版社/メーカー: 集英社発売日: 2009/11/20メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 27回…