HONMEMO

読書備忘録です。

エッセイ

アホの壁/筒井康隆

筒井版精神分析入門という感じの本です。筒井康隆らしいアホなタイトルのアホな本です。 朝日新聞のサイトで連載されている筒井康隆の「漂流 本から本へ」は、お気に入りのコラムですが、そこで、フロイトの精神分析入門にのめり込んだことが書かれていまし…

科学の扉をノックする/小川洋子

小川洋子による科学者ほのぼのインタビューです。インタビューしたのは、以下の方々。 渡部潤一国立天文台准教授 堀秀道鉱物科学研究所長 村上和雄筑波大学名誉教授 古宮聰高輝度科学研究センター特別研究員 竹内郁夫京都大学名誉教授 遠藤秀紀東京大学総合…

もののはずみ/堀江敏幸

パリの古道具屋などで出会った小物にまつわるエッセイです。2ページほどの短い文章が小さな写真とともに50ほど。 「もののはずみ」というタイトルは、ちょっとしたしゃれなのでしょうけれど、著者は、『ひとつの「もの」にあれやこれやと情をかけ、過度にな…

旅人/湯川秀樹

湯川秀樹博士って、どんな人だったのでしょう? 著者は、三高時代、多くの学生たちがバンカラ学生生活を謳歌する中で、エネルギーのほとんどを読書と思索に注ぎこんだことを、バランスの取れていない不調和な少年だったし、それを人間として立派なこととは思…

寡黙なる巨人/多田富雄

この方の名前をどこかで聞いたことがあるなと思ったのは、超一流の免疫学者としてではなく、白洲正子との交遊の関係で、どこかで聞いた(読んだ)のでしょう。能にも造詣が深く、新作能を作ったりされているそうです。そういう知の巨人が脳梗塞に倒れ、重度…

素人庖丁記/嵐山光三郎

嵐山光三郎は、悪党芭蕉とか、文人悪食とかを面白く読みましたが、真髄は、本書のような自らの五感でというか身体で書いたとでもいうべきものにあるように思います。魯山人との仮想茶漬合戦やおむすびの具は何がいいかといった現実的な話から、タケノコや豆…

がんと闘った科学者の記録/戸塚洋二(立花隆編)

ノーベル賞受賞者小柴昌俊さんの弟子で、ノーベル賞に一番近い日本人と目されていた方だそうです。 骨の髄まで科学者だった人だということがよくわかります。 最後の最後まで、なにか社会に貢献できないかと追及する姿勢に感じ入るばかりです。2009年4月予定…

人間はどこまで動物か/日高敏隆

「春の数え方」の続編。 「人間はどこまで動物か」という問いには、一本のスケール上での到達度を問題にしようとする近代の呪縛があるという。先進国・後進国、偏差値という概念も同じではないかと。(表題作) 本当の自然の草を「雑草」として刈り取り、ガーデ…

コルシア書店の仲間たち/須賀敦子

仲間たちに注がれる穏やかな、愛情あふれるまなざし。 全集を買おうかな。 コルシア書店の仲間たち (文春文庫)作者: 須賀敦子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1995/11メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 44回この商品を含むブログ (53件) を見る 105円@BO

木/幸田文

木をあたかも人のようにみて、思いを馳せる。凛とした文章が心地よい。今このような文章の書き手は何処に?佐伯一麦の解説がこれもまたよくて。 木 (新潮文庫)作者: 幸田文出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1995/11/30メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 26回…

裁判長!ここは懲役4年でどうすか/北尾トロ

日本の裁判って、書面審理主義とか言って、丁々発止の弁論は滅多にないのかと思っていたのだが、結構やってるんだな。 裁判長!ここは懲役4年でどうすか (文春文庫)作者: 北尾トロ出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2006/07メディア: 文庫購入: 1人 クリック:…

かがやく日本語の悪態/川崎洋

悪態というのとは違うのもたくさんあって、まあなんだかよくわからん*1。 悪態の面白さは落語が一番だな。 解説は茨木のり子 かがやく日本語の悪態 (新潮文庫)作者: 川崎洋出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2003/05メディア: 文庫 クリック: 4回この商品を含…

土を喰う日々/水上勉

焼きくわい、山芋の丸焼きって、ただ焼いているだけなんだが、うまそうだ。「食」にはいろいろな思いがこめられている。「精進」してみようかな。 土を喰う日々―わが精進十二ヵ月 (新潮文庫)作者: 水上勉出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1982/08/27メディア:…

魯山人味道/北大路魯山人

後半の料理論というか、訓話というかがおもしろくないのは、その説教臭さというのもあるだろうが、やはりこういうのは、抽象的な話ではなくて、具体的にこんな料理、こんな食材が美味いという話が面白いのだな。それにしても農産物の生産技術の向上や、魚の…

おぱらばん/堀江敏幸

三島賞をとったということのようなので、出世作ということでしょうか?この本は、「河岸忘日抄」の系譜の、エッセイだか、小説だか、評論だか、なんだろという不思議な堀江敏幸独特のもの。この人の文章は、ラストがいい。表題作「おぱらばん」の卓球のシー…

陰翳礼讃/谷崎潤一郎

表題作のほか、「懶惰の説」「恋愛及び色情」「客ぎらい」「旅のいろいろ」「厠のいろいろ」。日本(人、文化)を考えるための10冊なんて企画を立てたら確実にノミネートされるべき1冊だろう。 …私が何よりも感心するのは、あの玉虫色に光る青い口紅である。…

漱石先生ぞな、もし/半藤一利

「猫」は中学生の頃に読み始めて、途中で投げ出したので、まともに読んでいないのだ。読んでみようか。 漱石先生ぞな、もし (文春文庫)作者: 半藤一利出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1996/03メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 5回この商品を含むブログ (…

子午線を求めて/堀江敏幸

エッセイというか評論というか。 河岸忘日抄や本書のようなタイプが作者の本領なのかもしれないけれど、私は、「雪沼」、「熊」、「王子駅」みたいな作品が好み。 子午線を求めて (講談社文庫)作者: 堀江敏幸出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/10/15メデ…

他人と深く関わらずに生きるには/池田清彦

車もこないのに赤信号で待っている人はバカである 心を込めないで働く ボランティアはしない方がカッコいい 自力で生きて野垂れ死のう といった扇情的なタイトルの小文がならび、まあかなり極端な物言いが多いが、物の見方としては共感できる部分が多い。後…

ネコはどうしてわがままか/日高敏隆

この人のエッセイは、心休まる。タイトルからは、ネコのことがいろいろ出てくると思わせるが、ネコは表題のエッセイ1編のほかには、ちょこっと登場するだけ。 しかし最近は、コンビニで文庫本を売ってるんだな。儲かるのか? ネコはどうしてわがままか (新潮…

地球の果てまでつれてって/横尾忠則

30年前の本。流行の言葉でいえば「スピリチュアルな」世界の影響の非常に大きな人で、私にはついていけないところも多いが、嫌いではない。解説は中沢新一。 地球の果てまでつれてって (文春文庫)作者: 横尾忠則出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1986/03メ…

東京するめクラブ 地球のはぐれ方/村上春樹・吉本由美・都築響一

村上春樹ら3人の「ちょっと」変なところ旅行記。…名古屋、熱海、ハワイ、江ノ島、サハリン、清里。先頃読んだ椎名誠の「全日本食えば食える図鑑」での名古屋の食の衝撃から、「まずは魔都・名古屋」という帯に魅かれて購入。へたれた感じも楽しみ方次第。 東…

全日本食えば食える図鑑/椎名誠

シーナさんの本は久しぶり。 皆が皆ということでもないが、まあだいたいがゲテモノ食いをめぐる恐ろしくもユーモラスなお話で、イソギンチャク、クラゲ、ゴカイ、蜂の子、鮒寿司なんかが登場するのだが*1、それと同列に扱われているのが、「でらうまの謎。」…

ハイスクール1968/四方田犬彦

著者の世代くらいまでが70年安保、東大紛争といった政治の時代に参加することのできた最後の世代だろう。庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」や村上龍「69」などもそうなのだが、何やかや言って私にはちょっと眩しく思える時代であり、世代で、私はこの頃の…

父・こんなこと/幸田文

父幸田露伴を看取るまでをしるす「父―その死」、父と娘の日常を書く「こんなこと」の2編。幸田文は、概ね私の祖父母の世代。その時代らしさを感じ取る面白さもあるけれど、一方で、偉大な父と勝気な娘の交情が一人の娘としての目から書かれていて、時代であ…

わからなくなってきました/宮沢章夫

宮沢章夫のエッセイを読むのも3冊目になって、まあだいたいその企みも分かってきた…のだろうか。わからなくなってきました。 わからなくなってきました (新潮文庫)作者: 宮沢章夫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1999/12/27メディア: 文庫購入: 6人 クリッ…

思い通りの家を造る/林望

家つながりで。 都市には都市の原理があるが、東京には田舎の原理が残り、ねじれた形での持ち家志向になっている。日照が欲しい、庭が欲しいという農村的意思が、パリのような都市の合理性を持ちえなくしてしまったと。 イギリスのセミデタッチトの家、「寄…

ガラスの地球を救え/手塚治虫

息子が中一の時の課題図書だかの一つに上がっていた本で、最近「まちの本屋のオススメ本」という企画にも取り上げられていたので、へえと思って読んでみた。 よい子のための道徳の時間(?)の副読本みたいな本だな、こりゃ。手塚治虫はやはりマンガを読むべ…

東京のオカヤマ人/岩井志麻子

エッセイというより連作短編ホラー小説というべきかもしれない。 ホラーと官能・エロスとの親和性は高いけれど、ホラーとユーモア・笑いというのは相反するもので、共存することはなかなか難しいと思うのだが、本書は怖くて笑える稀有な本というべきか。 東…

東京旅行記/嵐山光三郎

1991年上梓というので、バブルが崩壊し始めた頃のお気楽食べ歩き。2004年に文庫化されるに当たってのフォローアップ付き。 懐かしかったのは、門前仲町の魚三。今(2004年)でもあら煮が50円とは。20年前に行ったときと同じ値段だ。 散歩ガイドブックとして買…