インド系アメリカ人によるO・ヘンリー賞、PEN/ヘミングウェイ賞、ピュリツァー賞などを総なめにした短編集。ピュリツァー賞って小説にも与えられるのか。ジャーナリストの賞だとばかり思っていた。
いずれの短編も、余韻深く、素晴らしい。原作では、「病気の翻訳」が表題作となっているようだが、私は「停電の夜に」の方が好きだ。「停電の夜に」の原題は「A Temporary Matter」。これを「停電の夜に」というタイトルにしたのはうまい。うまいけれど、「一時的なこと」といった本来の意味が消えて、作者がタイトルに持たせた意図が減殺されてはいないだろうか。翻訳はどんなに上手くても限界がある。(なお、この作品の冒頭に出てくる「臨時の措置」というのはおそらくA Temporary Matterの訳なのだろう。)原文でも読んでみたいと思わせる本だ。
- 作者: ジュンパラヒリ,小川高義
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/02/28
- メディア: 文庫
- 購入: 10人 クリック: 142回
- この商品を含むブログ (167件) を見る