HONMEMO

読書備忘録です。

政策論争のデタラメ/市川眞一

環境・エネルギー、医療、教育、郵政、官僚システムに関する政策に関する問題点を指摘するとともに、提言を行っているものですが、次のような点などに共感するところが多くありました。

  • 日本の温暖化対策は、効果の薄い道徳的努力を国民に求めている点で問題がある。個人の努力に依存するような手法、快適な生活を放棄するよう求めるような精神論では、温暖化阻止も京都議定書の目標達成も難しい。温暖化ガス抑制に関して、国が政策的にコントロール可能で大きな効果が期待できるのは、供給サイドの政策転換すなわちエネルギー供給源を原子力発電を中心に(50%)にすることである。太陽光、風力なども重要だが、非効率で不安定なので、過剰な期待はすべきでない。
  • 後期高齢者医療制度は、高齢者独自の医療保険制度(負担は1割に過ぎない)を構築し、現役世代の負担軽減を図るもので、制度として必要なものだが、制度設計の問題が、ネーミングや天引き問題などの感情論にすり替えられ、冷静な評価が行われていないのが問題である。
  • 政権与党あるいは大臣による官僚バッシングは、大臣あるいは政治家の職務怠慢と同義である。マスコミも政治家も「天下り」だけに焦点をあてて官僚制度の批判をしているのは本来改革すべき物事の本質から目を背けているのに等しい。役人を攻撃するのが、「正義の味方」の踏み絵になっている。官僚制度に少しばかり手を加え、天下りを禁止したとしても優秀な人材が役人にならなくなるだけで、政治システムはなにも良くならない。政治制度については、a衆参両院の定数大幅削減、b国会議員スタッフの大幅増、c幹部公務員の政治任用と身分保障の廃止が必要。

著者は、事業仕分けの民間仕分け人の一人ですが、著者の論法によれば、事業仕分けというのも、こんなアホ臭い手法をとらなくては無駄の削減ができないということは、大臣あるいは政務三役が自らの無能をさらけ出しているのに等しいということになる訳で、事業仕分け自体を仕分けるよう提言して欲しいものです。

政策論争のデタラメ (新潮新書)

政策論争のデタラメ (新潮新書)