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読書備忘録です。

自然、文化、そして不平等/トマ・ピケティ

21世紀の資本」は、"資本収益率(r)>経済成長率(g)であるため、富は資本家へ蓄積され、格差を生む。その是正のための再配分が不可欠"という程度しか知らないが、大著でもあり、読むつもりはない。楽をしてピケティの考えの一端に触れようと思って2022年の講演録である本書を手に取った。

不平等・格差は、文化や政治などの社会制度と密接な関係があり、自然要因はそれほど大きくない。

社会は今なお極めて不平等だが、政治闘争などにより平等へと向かう基調としての流れは続いている。ただ、社会制度(国)による程度の違いは極めて大きく、また、所得格差の是正の動きに比べ、資産格差の是正の進歩はわずかである。

しかしながら、強力な参政権運動により普通選挙を実現し、極めて平等な国となったスウェーデンの例や、戦後レーガン登場までのアメリカの所得税最高税率が80%程度であっあことなどをみても、決定論が成り立たないことは明らか。 不平等の問題は解決可能だという強いメッセージを打ち出している。

自然破壊、温暖化と不平等の問題には、重要としつつ、本書では最後に少し触れているだけ。