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読書備忘録です。

女性のいない民主主義/前田健太郎

政治学において、ジェンダーは、環境、人権、民族というような政治的「争点」として扱われてきたが、本来、いかなる政治現象を説明する上でも用いることのできる視点である。ジェンダーの視点に基づく議論をこれまでの標準的な学説と対比してみると政治の世界は大きく見直される。それは常に男女の不平等に注意を払いながら政治について考えることを意味する。

男らしさ、女らしさを求めるジェンダー規範を法律で直接覆すことは困難であるが、ジェンダー規範の働きにより生じる組織の男女比の偏りは規制により対処できる。政治におけるクリティカル・マスは、その値を上回れば女性が本来の力を発揮できるような女性議員の比率であり、30%という数字が重視されてきた。→クウォーター制

一定以上の女性議員が必要なのは、

・選挙で争点となるのは様々な政策争点のごく一部であり、それ以外の争点については政治家が幅広い裁量を行使することとなるが、その場合、女性にとっては同じ経験を有する女性議員の方が自分の意見をよりよく反映できる。

・争点化されていない問題を争点化することについても同様のことが言える。

からである。

代表者の男女比が均等に近いほど、その政治体制は民主的といえる。

ジェンダー・クウォーターには様々な態様があるが、これを導入している国は多い。日本の女性議員比率が低いのはその導入の遅れが一因だが、日本も2018年に候補者の均等の努力義務を導入。政党クウォーターも注目される。

 

女性のいない民主主義 (岩波新書)

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