HONMEMO

読書備忘録です。

起業の天才!/大西康之

江副浩正の評伝。江副浩正という人物、彼が作り育てたリクルートという会社は、相当にいかがわしい面を持っている(江副と親交があり、一時会長を務めたダイエー中内は、社員を集めて、いかがわしくていいんだ、もっといかがわしくなれ!と訓示する)。一方、リクルートは、当時の日本では(今でも)異質な典型的ティール組織で、江副が失脚しなければ、米国に先んじてプラットフォーマーになっていたのではないか、併せて事件に巻き込まれて真藤恒がNTTを去ることがなければ、日本の情報通信産業、さらに言えば日本経済は現状のような体たらくではなかったのではないかと。歴史のifはわからないが、本書はそれをあり得た未来だと思わせる説得力を持っているように思う。

マスコミが「濡れ手に泡」じゃないかという国民の嫉妬心に火をつけて、かなり強引に犯罪者とされたという面もあるようだ。著者は(いわばメンターとしての)エンジェル投資家の不在を江副、リクルートの転落の要因の一つにあげる。

江副の人となりは、DVであったり、特に今から見るとどうなのかというところは多々あるものの、なかなか興味深い人物に描かれている。

冒頭5ページほどの早逝したエンジェル投資家滝本哲史へのインタビューが本書の的確な要約になっている。