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読書備忘録です。

日本人はなぜ貧しい人が多いのか/原田泰

2004〜09年のNIKKEI NET BIZ+「経済学で考える」のコラムを中心に編集されたもの。玉石混淆という感があるが、いくつかメモ。

  • 日本は相対的貧困率が高いが、これは、児童手当、失業給付、生活保護*1などの個人への所得再分配が少ないから。日本の社会安定機能は、組織を通じて生活の安定を図る(公共事業による景気対策)だったが、生存権を満たすためのお金を直接払った方が安上がり。
  • 日本全体の経済力は、人口が減少すれば小さくなるが、重要なのは国民一人一人の豊かさである。高齢化の進行も、失われた十年においても労働生産性が年2%上昇していたことを踏まえれば悲観することではない。
  • 日本の年金制度は、高度成長期の惰性により給付水準が高いものになっている(世界一気前がいい)。高齢者が豊かになった(実質消費水準が上がった)のは年金のおかげであり、現在の高齢者の消費水準を80年代のレベルにまで削減しても良いのではないか(年金支給20%強削減)。『日本の年金を半分にしても世界一豊かなアメリカや世界一の福祉国家であるスウェーデンに劣らない。すぐさま高齢者へのサービスを削って、若者を負担から解放すべきだ。』
  • 日本経済の大停滞の理由は、労働生産性の低下ではなく、デフレにより実質賃金が高止まりし、労働投入が減少したから。
  • 日銀は実質的にゼロ%物価目標政策を採用している。

新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学

新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学

*1:日本の生活保護は、支給水準は高いが、限られた者にしか支給されていない。