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読書備忘録です。

科学者はなぜ神を信じるのか/三田一郎

本書で紹介される超一流の物理学者が神をなぜ信じるのかという考え方の道筋、折合いの付け方、あるいは神からの影響の受け方は、様々に興味深い。

著者は、科学法則の創造者が神であるとの考えであり、宇宙のはじまりを、科学法則を誰が作ったかを突き詰めていってもキリがなく、最後に「何か」がある以上、神は存在しないと考えることこそが思考停止であり、最後には神は存在すると信じるとする。神業とは、永遠に来ない終わりであると。

一方、小林・益川理論の益川博士は、信者をやめさせようとする「積極的無宗教」の立場であり、また、小柴博士は「宗教がない方が世界は平和だ」と言う。ドーキンスが「神は妄想である」として、宗教の弊害を痛烈に批判したのも同様の立場であろう。

これに対し、著者は「神と教会と宗教を混同すべきでない。神を心の中で信じることは、教会や宗教活動とはまた別のことだ」という旨述べる。それはまさにそのとおりで内心の自由なのだが、著者は聖職者でもあるので、それで終わりで済むのか?という感じなのだが、それは本書の扱うところではないというところであろうか。