HONMEMO

読書備忘録です。

2007-01-01から1年間の記事一覧

夜の来訪者/J.B.プリーストリー

本探しの参考にしているサイトの一つ「スゴ本」さんが最近『スゴ本』に指定していたこともあって(NHK週刊ブックレビューでの逢坂剛の推薦も見ていた)、期待して読んだ。 期待どおりの面白さだった。二重底になっている計算しつくされた贅肉一つないプロッ…

芥川賞・直木賞発表

芥川賞は諏訪哲史「アサッテの人」、直木賞は松井今朝子の「吉原手引草」。北村薫受賞の目はまだあるのだろうか……。 cf.asahi.com:芥川賞に諏訪哲史さん、直木賞は松井今朝子さん - 出版ニュース - BOOK

ナイロビの蜂/ジョン・ル・カレ

スパイ小説の巨匠ということで違う本を探していたのだが、映画化された関係か本書がたくさん新古書店においてあったので手にとってみた。 なんだか結構読みにくい、社会派風の冒険小説だった。個人的に、集中して読めない環境だったこともあるのだけれど。 C…

14歳からの哲学/池田晶子

14歳に語りかけるような文体が気持ち悪い。この文体が嫌で投げ出す中学生が結構いそうな気がする。 難解な部分もあるけれど、少なくとも哲学的思考というものがどういうものかということは良く分かる。例えば、こんな感じ。 …目の前に花があることの確実さを…

ハラスのいた日々/中野孝次

何年積んでいたか。20年前のベストセラー。ま、素直にジンときてしまう。 ハラスのいた日々 (文春文庫)作者: 中野孝次出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1990/04メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 11回この商品を含むブログ (19件) を見る 105円@BO

明治天皇/ドナルド・キーン

新潮新書の第1号「明治天皇を語る」がやはりちょっと物足りなくて、いずれ読みたいと思っていた本。なかなか難しい対象だと思うのだが、やはりさすがに手堅い描き方で、好感を持って読んだ。解説は入江昭。 明治という時代は帝国主義の時代で何かと批判があ…

芥川賞・直木賞候補作発表

芥川賞、直木賞の候補作が発表された。 記事→<朝日><読売> おっと、恒例メッタギリは、ここ。 <芥川賞> 円城塔「オブ・ザ・ベースボール」、川上未映子「わたくし率イン歯ー」、柴崎友香「主題歌」、諏訪哲史「アサッテの人」、前田司郎「グレート生活…

三島由紀夫賞選考委員改選

三島賞の選考委員が改選されたようなので、メモしておく。→記事 新委員は小川洋子、川上弘美、辻原登、平野啓一郎、町田康。 規定では任期4年となっているので、任期満了による改選なのだろう。宮本輝なんかずいぶん長いことやっていたように思うので、再任…

内田センセ面目躍如

内田樹の言説については、いろいろあるのだろうけれど、今日のhttp://blog.tatsuru.com/2007/06/27_1049.phpなんかの面白さは面目躍如、真骨頂と言うべきだろうな。 憲法9条について、 『あれは、よく考えたら、国際関係における「めちゃモテぷっくり唇」な…

愛国の作法/姜尚中

愛国は、愛郷の延長にあるものではないというのがポイントでしょうか。 石橋湛山が靖国廃止論を言っていたというのは知らなかった。 ハンナ・アーレントの入門書ってのはないのかな。 愛国の作法 (朝日新書)作者: 姜尚中出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: …

危機と克服 ローマ人の物語21〜23/塩野七生

ネロの自殺(68年)後、五賢帝までの約30年間の物語。 69年1年間にガルバ、オトー、ヴィテリウスと3人の皇帝が暗殺あるいは自殺に追い込まれるという異常事態。健全な常識人と評されるヴェスパシアヌス帝が継ぐ。その息子ティトゥスはポンペイの災害等にきち…

遊動亭円木/辻原登

表題作ほか10編の連作短編。ちょっと粋で、ちょっと不思議、ちょっと怖い…。味わい深い物語だけれど……きちんと読めていないな。またいずれ読み直したい。 遊動円木って昔はよくあったけど、今はほんとに見なくなったな。 谷崎潤一郎賞受賞。解説は堀江敏幸。…

こんな夜更けにバナナかよ/渡辺一史

筋ジストロフィー患者鹿野靖明と氏を支えたボランティアたちの現場を取材したノンフィクション。大宅壮一ノンフィクション賞、講談社ノンフィクション賞受賞。 鹿野氏とボランティアの関係は、ワガママな寅さんと“とらや”の面々にも譬えられており、そういう…

ぼっけえ、きょうてえ/岩井志麻子

表題作のほか、「密告函」「あまぞわい」「依って件の如し」の4編。山本周五郎賞受賞。京極夏彦の意味不明のつまらない解説つき。 表題作と「密告函」が正反対のスタイル(ファンタジー調vsリアリズム調)でそれぞれ恐テェ〜。 「あまぞわい」を除いて、岡山…

オレ様化する子どもたち/諏訪哲二

内田樹「下流志向」のベースとなった本の一つだが、くどくてつまらない。心理学用語がじゃまくさい。現場の先生の普通の言葉で書いた方がいいのでは? 学校には、個人としてぢゃなくて「生徒」として来いってことかな。 第二部は、宮台真司、和田秀樹、上野…

わが人生記/渡邉恒雄

ナベツネの自伝みたいなちょっと変わった作りの本。色々と悪役イメージを作られている人だし、ジャイアンツ嫌いなのでなおのこと偏見で見てしまうが、一廉の男であることは間違いないなあと。面白いのは哲学に魅せられ、共産主義運動に没入した青春時代の話…

ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る/梅森直之

ベネディクト・アンダーソンの「想像の共同体」と言えばナショナリズム論の名著として名高く、比較的最近、その続編(?)が出て話題となっていた。興味はそそられても読むにはちょっと骨が折れそうな感じで躊躇していたので、とっつきにと思って手にとって…

ニッポン/ブルーノ・タウト

1933年から36年にかけて日本に滞在したドイツ人建築家ブルーノ・タウトの印象記。桂離宮が好き、東照宮が嫌いというのは、簡素対華美の好みということもあるが、天皇至上の時節柄でもあったからだろう。 伝統を守り伝えることと新しい文化を取り入れることの…

歯と爪/ビル・S・バリンジャー

なぜこの本を買ったのか忘れてしまったくらい長い間積んでいた。何かで面白いと紹介されていたんだと思うのだが、私には全然ダメ。解決部分を袋とじにしている本だが、そんな邪道をしないと売れないのかとひねくれた見方もしたくなる。まあ最近特に謎解き推…

照柿/高村薫

「マークスの山」以来の高村薫。野田達夫はなぜ人を殺したのか、その不条理は熱処理工場のリアリティに支えられている。合田と野田、あるいは合田と美保子の関係の訳の分らなさのリアリティがまた凄い。 それでも、高村薫は、合田刑事ものより、「黄金を抱い…

三島由紀夫賞選評

「新潮」の三島賞の選評を立ち読み。想像どおりテルちゃんはブーたれていた。パラパラ読んだ感じでは、もう選考委員を辞めるって感じだったな。実際やめた方がいいのかも。たぶん、宮本輝は、筒井康隆の対極にあって、前衛を理解して評価しようという姿勢が…

死者の書・身毒丸/折口信夫

冒頭の大津皇子のよみがえりシーンがなかなかすさまじくてよいのだけれど、藤原郎女登場以後はおそらく中途半端にしか読めていなくて、わけわからん状態。またいずれ落ち着いて読み直したい。 この本、TSUTAYAで面陳されていたけれど、客層と読者層がズレて…

山本周五郎賞と直木賞など

読売の書評サイトに山本賞についての記事。そんなに目新しい情報はないけれど、直木賞との関係が非常に強いことが改めてよくわかる*1。 この記事では、直木賞・芥川賞を後に受賞した人が9人いることが分かるが*2、逆に1988年の創設以降2004年以前に山本賞を…

花のレクイエム/辻邦生・山本容子

辻邦生は、かつて「回廊にて」とか何冊か読んだことがあって、なんだか懐かしいなと思って手にとった。月ごとに一つの花をモチーフにした掌小説と山本容子の版画からなる12編。上品な一冊。 花のレクイエム (新潮文庫)作者: 辻邦生,山本容子出版社/メーカー:…

日本の思想/丸山真男

日本の政治思想を考える場合の基本書。 基軸となる思想を持たないこと、西欧思想の流入、縦に長い布筒のような神道、国体、無責任体制、マルクス主義の意義など。 ササラ型とタコツボ型。 日本の思想 (岩波新書)作者: 丸山真男,丸山眞男出版社/メーカー: 岩…

超バカの壁/養老孟司

これまた今更ながら。半年以上積んでたかな。 仕事というのは、社会に空いた穴です。道に穴が空いていた。そのまま放っておくとみんなが転んで困るから、そこを埋めてみる。ともかく目の前の穴を埋める。それが仕事というものであって、自分に合った穴が空い…

小説日本婦道記/山本周五郎

乙川優三郎を読んだ余韻から、積読山の中から引き出して。 計11編の短編集。この本は、本当にタイトルで損をしていると思う。「女だけが不当な犠牲を払っている」という批判を浴びたのに対して、周五郎はそんなことは全くないと反論、実際そうなのだろうと思…

生きる/乙川優三郎

表題作のほか、「安穏河原」、「早梅記」の計3短編。直木賞受賞作。乙川優三郎の本を読むのは、4冊目か。 縄田一男の解説が直木賞の選評なども引用しつつよくまとまっていて、ここに付け加えてメモをしておくようなことはない。しみじみと、清々しく、じんわ…

レーザー・メス 神の指先/中野不二男

レーザー・メスの開発に取り組んだ脳神経外科医滝沢利明とエンジニアのプロジェクトX話。開発の苦労話よりも脳外科手術の実際がリアルに描かれていて迫力がある。 ただ、作品全体としては、プロジェクトX的な面白さも何か飛びぬけて面白いということもないし…

牛への道/宮沢章夫

「青空の方法」がツボだったので。クタ〜、ヘナ〜ってな感じ。もっと読も。 牛への道 (新潮文庫)作者: 宮沢章夫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1997/04/25メディア: 文庫購入: 12人 クリック: 53回この商品を含むブログ (67件) を見る 105円@BO