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読書備忘録です。

2019-01-01から1年間の記事一覧

21世紀の戦争と平和/三浦瑠麗

冷戦後の世界において戦争を抑止するには? 超大国間の戦争には核抑止が働くが、イラク戦争のように、軍が反対する中でもシビリアンが戦争を決断するのは、血のコストが共有されないからではないか。 このような観点から、民主的な決断を行うシビリアンが、…

出羽三山/岩鼻通明

出羽三山――山岳信仰の歴史を歩く (岩波新書) 作者: 岩鼻通明 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2017/10/21 メディア: 新書 この商品を含むブログ (3件) を見る

鳥肉以上、鳥学未満/川上和人

鳥類の筋肉、骨格のお話。独特のギャグは、ほとんどすべってると言って良いと思うのだが、そのせいでこういう内容でも読み進められるのは事実。 鳥肉以上,鳥学未満. 作者: 川上和人 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/02/20 メディア: 単行本 この商…

日本人の神/大野晋

神の祭祀は、今日の政治の運用に対する基本的考え方、対処の仕方の原型。すなわち、金品を権力者に贈与することによって、下賜される便益を享受しようとする行動の原型であり、ハラヘの考え方は、罪過、公害、公金私用などは隠蔽し、先送りすればいずれ消失…

天皇の憂鬱/奥野修司

天皇の憂鬱とは、 皇位継承問題と国民との距離感 天皇の憂鬱 (新潮新書) 作者: 奥野修司 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/03/14 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る

世襲格差社会/橘木俊詔・参鍋篤司

親世代の所得格差が大きい国ほど、その格差が子供の世代につながりやすいことを示す曲線をグレート・ギャツビー・カーブというそうな。アメリカンドリームは否定されている。 世襲格差社会 - 機会は不平等なのか (中公新書) 作者: 橘木俊詔,参鍋篤司 出版社/…

歴史認識とは何か/細谷雄一

いわゆる歴史認識を問うというよりは、政策判断における国際情勢認識の重要性を説くもの。 第一次大戦後、欧米では、これまでにない大規模な破壊と人的損失を経験したことから、国際協調主義、平和主義の流れが強まるが、第一次大戦を天佑として捉え、被害を…

知っておきたい仏像の見方/瓜生中

如来、菩薩、天、明王、羅漢・高僧の別や三十二相・八十種好、台座や光背、印や持物など、仏像についての基礎を簡潔にかつ要点を知ることができる。 知っておきたい仏像の見方 (角川ソフィア文庫) 作者: 瓜生中 出版社/メーカー: 角川学芸出版 発売日: 2007/…

観光亡国論/アレックス・カー 清野由美

タイトルがミスリーディングだが、観光が亡国の道だというのではなく、観光振興の重要性を大前提としつつ観光亡国とならないための提言を記したもの。 適切なマネージメントとコントロールの必要性を具体事例に即して説く。規制に当たっては一律規制の弊害を…

気候で読む日本史/田家康

太陽活動や火山の噴火に伴う気候変動が飢饉、災害をもたらし、これが日本の歴史を動かしてきた。 もう少し整理して書いてくれるといいのだが。 気候で読む日本史 (日経ビジネス人文庫) 作者: 田家康 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社 発売日: 2019/01/08…

わたしの献立日記/沢村貞子

沢村貞子らしい食卓だ。食生活のひとつの理想の姿に私には思える。惣菜を買ってきて食べるより、丁寧に料理をして食べたい。忙しいと難しいところもあるが、沢村貞子にしても忙しくなかったわけでもない。結局、料理が楽しいと感じられるか、惣菜より美味し…

モンスターマザー/福田ますみ

この母親の言動は人格障害によるもので、問題は学校にではなく、母親にあるということは比較的容易に明らかになるものだったように思う。それを子供の自殺という最悪の結果に追いやったのは、いじめ問題というステロタイプに押し込めようとする人権派弁護士…

曇天記/堀江敏幸

堀江敏幸は、詩人のような細やかな感性とことば使いに触れたくて読む。通勤電車のストレスフルな環境で読むのは全く興ざめなのだが。 「東京人」連載(2008〜) 曇天記 作者: 堀江敏幸 出版社/メーカー: 都市出版 発売日: 2018/03/24 メディア: 単行本 この商…

ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事がまわるのか/熊谷徹

150日って物凄いと思ったが、自分も130日くらいは休んでる。あと20日は確かに簡単ではないか。 ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか (青春新書インテリジェンス) 作者: 熊谷徹 出版社/メーカー: 青春出版社 発売日: 2015/08/04 メディア: 新書…

団地と移民/安田浩一

高齢化が進む郊外の団地に外国人労働者(移民)が流入して、住民のほとんどが高齢者と外国人というところが出てきている。高齢化に伴う孤独死などの問題と貧困、文化摩擦への対応、それはまさに、これからの日本が否応なく向き合わなくてはならない状況を先取…

恐怖の男/ボブ・ウッドワード

トランプ政権の意思決定過程が、まるでホワイトハウスで大統領の隣で見ているかのように記されていて、出色。 トランプ大統領は、極めて感情的で、気まぐれ。知能が低いとか小学生のようだなどと周りから評され、ブリーフィングをまともに聞くことも出来ず、…

日本人の勝算/デービッド・アトキンソン

人口減少が進む中で、経済成長を続けていくためには、生産性を上げるしかない。そのためには、最低賃金を継続的に引き上げ、人材育成トレーニングを強化し、所得を増やすとともに、企業規模を拡大して、高付加価値・高所得経済を目指すべきと。 最低賃金につ…

統計学が最強の学問である/西内啓

今更読むベストセラー。 素人にはやや難解なところもあるが、挑発的な文体も含めてなかなか面白い。エビデンスとして最も信頼できないものは、「専門家の意見」と「基礎実験の結果」だというのは、まさにまさに。 自分の頭で考えようとするときにこのような…

創造するということ/宇野重規・東浩紀・原研哉・堀江敏幸・稲葉振一郎・柴田元幸・中島義道

サブタイトルに続・中学生からの大学講義3とあり、桐光学園+ちくまプリマー新書編集部・編となっている。7人による講義録の体裁だが、5編の初出は「私がつくる物語」、2編は別々の本から取られていて、再編集されたものとある。大学講義1を見ればわかるのだ…

リバタリアニズム/渡辺靖

リバタリアニズム、自由至上主義は、公権力を極限まで排除し、自由の極大化を目指すもので、リバタリアンの思想的位相を示すものにノーラン・チャートがある。 本書で示された図がわかりやすいが、x軸に経済的自由を重視する、軽視するを、y軸に個人の自由を…

感情化する社会/大塚英志

感情化する社会とは、理性や合理でなく、感情の交換が社会を動かす唯一のエンジンとなる社会。 生前退位についての天皇の「お気持ち」表明と国民の圧倒的共感はまさにそれを示すもので、アダムスミスの言う中立的観察者を失っている。「お気持ち」は、天皇に…

桜の科学/勝木俊雄

サクラの不思議、`染井吉野' の真実、桜と日本文化の3章立て。 著者は、クマザクラを発見した森林総研の研究者。桜のやさしい植物学、分類学から桜にまつわる文化的なエピソードまで。桜に対する情熱がひしひしと。 オールカラー、多くの写真が美しい。 桜の…

朝日ぎらい/橘玲

朝日新聞購読層のような「リベラル」、世界標準のリベラル、保守、ネトウヨなど、政治思想と具体の政治スタンスの成り立ち、動向などをわかりやすく説明。リベラル化が世界的に進む中で、若者にそっぽをむかれる既得権益護持の(朝日的)「リベラル」の行く末…

百年の散歩/多和田葉子

ちょっと備忘の切り取り。 わたしは、黒い奇異茶店で、喫茶店でその人を待っていた。 …あこがれの、焦がれの、焦げついた、じりじり燃える、燃え尽きた、熱い、輝くポーランドへ、 …『おつまみ』という概念はなく、おつまず、つままず、つつましく、きつねに…

誰も農業を知らない/有坪民雄

農業は多様。 遺伝子組換農作物の導入を進めるべき。 農薬は安全。 誰も農業を知らない: プロ農家だからわかる日本農業の未来 作者: 有坪民雄 出版社/メーカー: 原書房 発売日: 2018/12/12 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る

日本の同時代小説/斎藤美奈子

最近、小説に関心をなくしたので知らなかったが、大震災以降、純文学ではディストピア小説が流行していると。著者はその先を示せないことが純文学における読者離れの原因の一つと指摘する。確かにそんな小説読みたいと思わない。 小説は時代の子(時代の先を…

「農業を株式会社化する」という無理/内田樹・藤山浩・宇根豊・平川克美

4人による農業論。 内田樹の文章が表題作。 - 「農業を営利事業にした場合には、確実にモノカルチャーになる。」というが、低コスト単一品種大量生産を狙う企業の一方で、少量高付加価値を狙う企業が、多様性のニーズに応えていくのではないか? - グローバ…

草薙の剣/橋本治

橋本治が生きた時代の自画像というか、私小説がある小説家の物語であるなら、これは「時代」の私小説というような趣きがある。巡礼、橋という小説の系譜ではあるが、本書はそれらを含む橋本治の小説の試みの集大成なのだろう。本書を遺して本望では? 合掌 …

さいはての中国/安田峰俊

-深圳のネトゲ廃人 (NHKで同様の特集を見た。) 社会主義中国の経済社会の矛盾 - 広州のリトルアフリカ 中国がアフリカに大々的に投資をしている一方で、実はアフリカからの移民が相当程度ある。アフリカ移民に対し、中国人が「連中は声が大きくて態度が傲慢…

リーダーを目指す人の心得/コリン・パウエル、トニー・コルツ

著者の経験から身を持って語る優れたリーダーシップ論。マイ・アメリカン・ジャーニーに続く自伝的要素もある。 大量破壊兵器を所有しているとしてイラク戦争に突入した「消せない過ち」についても率直に語っている。 今は講演を主たる業としているようだが…