HONMEMO

読書備忘録です。

2005-01-01から1年間の記事一覧

生協の白石さん/白石昌則

15分程の立ち読みで粗々読んでしまいました。楽しませてもらいました。白石さん、本屋さん買わなくてごめんなさい。 生協の白石さん作者: 白石昌則,東京農工大学の学生の皆さん出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/11/03メディア: 単行本(ソフトカバー)…

凍/沢木耕太郎

沢木耕太郎10年ぶりの長編ということで、息子が買ったのを拝借してホイホイ読む*1。 「登山家夫妻がヒマラヤの山に登り、帰りに雪崩に遭って酷い凍傷を負いました」というお話がこういう胸を熱くする物語になる。期待どおりに(以上にと言うべきなのだろうな…

血と骨/梁石日

梁石日の父をモデルとしたという金俊平という男・・・ケダモノ、非道、鬼畜など、どのような言い方をしても表現しきれない。この剥き出しの暴力とエゴの恐怖、理不尽、不条理は、この本を通読して震え、吐き気を催すことで初めて実感されるのではないか。ビー…

ダ・ヴィンチ・コード/ダン・ブラウン

かみさんがどこからか借りてきて長々置き放しにしていたので、超ベストセラーということもあって土日にパラパラ読んだ。こりゃ田舎者アメリカ人の書いたTV2時間ドラマ「御当地サスペンス」(地方の観光協会か何かとタイアップして名所旧跡で殺人事件が起こる…

武相荘

秋晴れに誘われて、かみさんと二人、武相荘*1に行ってきた。「二人でこういったところに来るって、ジジババになったみたいね」と、かみさんが言い、ほんとだねと大笑い。宅地の中の小さな異次元空間だ。白洲次郎、白洲正子も博物館なのかと・・・。すぐ隣が…

妻と私・幼年時代/江藤淳

江藤淳は、私の親父と同世代。親父の本棚には「漱石とその時代」、「小林秀雄」、「一族再会」、「海舟余波」など多くの氏の著作があった。私自身は比較的最近になって文庫本で「海は甦る」と「南州残影」を読んだくらいで(山本権兵衛の評伝「海は甦る」は…

グッドラックららばい/平安寿子

独特のみょーな雰囲気を持った家族小説。20年間家を出たままの鷹子とその夫信也の関係など突飛な設定なのだけれど、異常さを感じさせないリアリティがある。家族それぞれ(特に母鷹子)の性格設定にムフフフという所があって楽しい。解説は山田詠美。 グッド…

リンさんの小さな子/フィリップ・クローデル

川上弘美による本書の絶賛の評↓に踊らされて購入。 ・・・幾(いく)つも書評を書いてきたが、小説の流れてゆくさまばかりを、こんなふうに書きたくなるのは、私にとっては生まれて初めてのことだ。ただそれだけの、物語。そして、それ以上、何もつけ加える…

天皇ごっこ/見沢知廉

う〜ん。なんだかよく分らんけど、尋常ならざるパワーを感じさせるところはある。解説は宮台真司。ふ〜ん。 最近亡くなった著者の冥福を祈ります。 天皇ごっこ (新潮文庫)作者: 見沢知廉出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1999/07メディア: 文庫購入: 2人 クリ…

リプリー/パトリシア・ハイスミス

一昨日この本を読み始めたところ、偶然にもNHKBSでルネ・クレマン監督アラン・ドロン主演の「太陽がいっぱい [DVD]」を放映していた。30年も前にTVで見た記憶があるのだが、こんなに素晴らしい映画だったかと改めて確認した。ぎらつく太陽などイタリアの風景…

錦繍/宮本輝

こんな小説みたいな長い手紙なんてあり得ないなどというつまらないツッコミを全く許さない、とても美しい、上品な、大人の恋愛小説。一つの極致だなという印象。女性からみると有馬ってどうよというのはあるだろうなという気もするけれど。傑作。 錦繍 (新潮…

オヨヨ島の冒険/小林信彦

ブックオフの105円コーナーで発見。新古書だらけの中ではめっけもの。(このときの掘り出し物のもう一冊は「軍旗はためく下に」(積読中))。70年3月上梓、角川文庫初版が74年。購入したのは、83年の18版。オヨヨシリーズの第一作。オヨヨシリーズといえば一…

私説東京繁昌記/小林信彦・荒木経惟

「繁昌」というのは反語で、東京における<町殺し>の進展による「衰退」、「衰亡」の記録。氏の東京への愛着とそれ故の怒り。天才アラーキーの写真が殺された町の風景を良く捉えている(こういう本は本当は文庫より単行本で楽しみたい)。 私説東京繁昌記 (…

新解さんの謎/赤瀬川原平

三省堂新明解国語辞典はすごいらしいというのは仄聞していたが、本当にすごい。久方振りに爆笑した。こんなに笑ったのは、糸井重里というかイトイ新聞の「言いまつがい」を読んで以来かな。辞書自体がヘンなのだが、著者の料理の仕方がまた秀逸(ヤワラちゃ…

MISSING/本多孝好

センスを疑うタイトルだが、中味はまあ悪くはないってところかな。5編からなる短編集。「瑠璃」のルコ(変な名前だ)がなかなか魅力的だ。 MISSING (双葉文庫)作者: 本多孝好出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2001/11メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 97回…

一輪/佐伯一麦

電気工の青年と風俗嬢のロマンス。こういうのを純愛物語っていうんだろう。作者は、私と同世代。今風というのとは違う古くさい(といっては何だが)純愛物語で、じんときた。併録の「ポートレイト」は、ほとんど同じ時期に発表されているようだが、表題作の…

ヴィク・ストーリーズ/サラ・パレツキー

サラ・パレツキーのV.I.ウォーショースキーシリーズは、私の大好きな物語だ。といっても、私の場合、シリーズ物は段々と飽きてしまうもののようで、第1作、第2作(「サマータイム・ブルース」と「レイクサイド・ストーリー」)は素晴らしいと思うのだが、…

ユリウス・カエサル ルビコン以前/以後〜ローマ人の物語8〜13/塩野七生

共和政体で帝国を治めることは不可能なのだろうか? カエサルの偉大さはもちろんなのだが、やはりクレオパトラはなかなか魅力的な人間だと思ってしまう。 ローマ人の物語〈8〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(上) (新潮文庫)作者: 塩野七生出版社/メーカー:…

後宮小説/酒見賢一

どこが面白いのかさっぱりわからない。第1回ファンタジーノベル大賞受賞作ということだが、ファンタジーってのは子供だましのことなのか?選考委員の一人井上ひさしは「シンデレラと三国志と金瓶梅とラスト・エンペラー」の魅力を併せ持つとか言ったらしいが…

天国までの百マイル/浅田次郎

タイトルからしてクサくて、浅田次郎の本でなければ絶対に手に取らないだろう。クサいんだよ、あざといんだよ、でも、シラけることなく、泣けるんだよな・・・。思わずPPMのCDを出してきて500Milesを聞いちゃったよ。 天国までの百マイル (朝日文庫)作者: 浅…

消えた少年たち/オースン・スコット・カード

家族小説の傑作。夫、妻として、あるいは父、母としてのステップとディアンヌの心の動きが、すごくリアルに描かれていて、身につまされるよう。いろいろと考えさせられる深みのある物語だ。北上次郎の思い入れいっぱいの解説によれば、「本の雑誌」による90…

大誘拐/天藤真

四半世紀前に上梓されたミステリーの傑作として名高い作品。奇抜な設定とユーモアが楽しい。 大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉 (創元推理文庫)作者: 天藤真出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2000/07メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 45回この商品を含む…

あかね空/山本一力

江戸町人もの人情小説。直木賞受賞作だが、なんかもう一つ・・・という感じ。井上ひさしは、選評で、家族を奇麗事で書かなかったのが作品の厚みになっていて、第二部で家族間の愛情のもつれを訂正していく構成が知的だという旨のことを言っていたようだが、…

ウォータースライドをのぼれ/ドン・ウィンズロウ

ニール・ケアリーシリーズ待望の第4弾なのだが・・・。一作目の「ストリート・キッズ」から作を追うごとに少しづつ面白さ、感激が感じられなくなってくる。「ストリート・キッズ」が面白すぎたというべきかもしれない。ニールに年を取らせたのがいけないん…

不夜城/馳星周

中国、台湾系マフィアが抗争を繰り広げる歌舞伎町。裏社会には、カモる人間とカモられる人間しかいない。生き延びるためには嘘つき、人殺しなどなんでもアリと考える主人公劉健一と、初めて似たもの同士というか、同種の人間だと認めて愛するようになる女小…

ラッシュライフ/伊坂幸太郎

人気の作家だが、初めて読む。いくつかのストーリーが並行して進み、終盤にその時間的からくりが明らかになっていくのだが、それぞれのストーリーが基本的に退屈で、かつ仕掛けが「作ってます」という印象が強くて鼻につく。 カカシ殺し(?)を描くという「…

白洲次郎 占領を背負った男/北康利

帯の城山三郎の推薦文にあるとおり、白洲次郎が持つ「不思議な存在感」が良く伝わってくる。うるさ型を好むうるさ型の信念の人だったようだ。英国風ダンディズムとともに明治の人間の気骨みたいなものを感じさせる。 白洲次郎と関係のないエピソードがいろい…

山谷ブルース/エドワード・ファウラー

米国人の学者によるバブル期を中心とした山谷のルポ(エピローグで、バブル崩壊後の状況の悪化についても記されている)。労働者、組合幹部等へのインタビューや実際に日雇労働者となってドヤに泊り込んで暮らした日々の日記などからなる。 主流社会からはじ…

白夜行/東野圭吾

73年の質屋主人殺人事件の被害者の息子亮司と質屋の顧客だった女の娘雪穂の周辺で20年にわたって起こる数々の殺人事件、婦女暴行事件・・・。亮司は闇に、雪穂は華やかな世界に生きるようになる。亮司と雪穂の関係が直接的には語られないので、様々な想像が…

青空のルーレット/辻内智貴

こういう小説に素直に感動できないというのはある意味悲しいことかもしれない。 「夢を見るから人間なんだ!」みたいなセリフは、クサッとは思うけど、まあいいだろう。でも、萩原の「人生は・・・」って長ゼリフは、クサイを通り越して吐き気を催させる。(…