HONMEMO

読書備忘録です。

2005-01-01から1年間の記事一覧

文人悪食/嵐山光三郎

食(たべること)を切り口とした夏目漱石から三島由紀夫にいたる40人近くの文豪評伝。嵐山光三郎って、そこいらのタレント的編集者みたいなものかと思っていたが、しっかりした文章で驚いた。明治から昭和初期にかけてのいわゆる名作って学生時代に結構読ん…

きんぴか/浅田次郎

きんぴか〜「三人の悪党」、「血まみれのマリア」、「真夜中の喝采」の3冊。 エンターテインメント、大衆小説の真髄。実話系週刊誌って読まないのだけれど、そのノリでもある。ギャグがクサかったり、スベッたりしているところもあるけれど、それもまた浅田…

停電の夜に/ジュンパ・ラヒリ

インド系アメリカ人によるO・ヘンリー賞、PEN/ヘミングウェイ賞、ピュリツァー賞などを総なめにした短編集。ピュリツァー賞って小説にも与えられるのか。ジャーナリストの賞だとばかり思っていた。 いずれの短編も、余韻深く、素晴らしい。原作では、「…

流星ワゴン/重松清

主人公「僕」(カズオ)とその息子広樹、「僕」とその親父(チュウさん)、交通事故死した橋本さんとその息子健太という3組の父と息子を通じて、重層的に父と息子の関係を描く。 親父が私の年齢の頃、私に対してどう思っていたか、今中学一年の息子が私をどう…

溺レる/川上弘美

不思議な掌官能小説8篇。やはり言葉の選び方なんかはうまいなと思う。芥川賞作家ってのは、いろいろ言われても、この点では優れている人(作品)が多いと思う。「百年」とか「無明」などは、漱石「夢十夜」の第何夜だったか、ゆりの花が咲く印象的な物語を連…

アメリカの鱒釣り/リチャード・ブローティガン

柴田元幸による『「アメリカの鱒釣り」は、翻訳史上の革命的事件だった』という帯の惹句に踊らされて購入。カバー裏によれば、67年に上梓、藤本和子による翻訳出版が74年。世界で200万部のベストセラーとなり、ブローティガンは、カウンター・カルチャーのイ…

夏への扉/ロバート・A・ハインライン

SFはあまり読まないが、その古典的名作として名高い本らしいので、書店で平積みされているのを見つけて購入した。 私がまだ生まれていない1957年に上梓。ハヤカワ文庫の初版が79年、05年までに56刷のロングセラーだ。 SFというかタイムトラベルも…

靖国/坪内祐三

イデオロギッシュにあるいは政治的にしか語られない靖国神社を、社会、文化、民俗学的視点で語る極めて興味深い本だった。 靖国神社は、ディズニーランドのようなアミューズメントパークであったし、戦後もそうあらんとしていた。 九段は、明治の権力者達の…

芥川賞選評

今回の候補作はあまり良いものがなかったというのが全体的な印象のようだ。受賞作「土の中の子供」も、積極的に推したのは黒井千次だけのようだ。もう一人くらいいたかな?(手元にないので分らなくなった。)今回も山田詠美の選評が、陳腐な比喩のけなし方…

死の蔵書/ジョン・ダニング

日本にも稀覯本収集家ってのはいるのだろうか。本を眺める趣味はないし、集める趣味もないのだが、初版本だからということで高値がついたりっていう稀覯本取引についての蘊蓄は、ふーんというか、メズラシイというか、理解不能というか・・・。ネロ・ウルフ…

ららのいた夏/川上健一

キャハハハ・・・ ららのいた夏 (集英社文庫)作者: 川上健一出版社/メーカー: 集英社発売日: 2002/01/18メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (23件) を見る

漂泊の牙/熊谷達也

厳しい自然の中で主人公はオオカミをどのように追い詰め、またオオカミはどのように逃げるのかといったシンプルかつ緊迫感のある小説というのを勝手にイメージしていたこともあって、TVディレクター恭子の筋はまだしも、ヤクザ殺人のミステリーにまで広がっ…

クジラが見る夢/池澤夏樹

夏休み自然と親しむエッセイの第2弾。イルカ好きの素潜り世界記録樹立者ジャック・マイヨールとバハマで過ごした日々の記録。ちょっとあっさり、すっきりしすぎ。マイヨールが言うと、「クジラは何を考えているって、哲学的冥想でしかありえない」ってな言…

旅をする木/星野道夫

この季節になると、何故だか自然に暮らす人の話を読みたくなる。早逝した写真家星野道夫の目が、心が捉えたアラスカの大自然、そこに暮らすインディアンなど人々の暮らし。そして星野の想い。 静かな言葉が心に沁みる。池澤夏樹の解説の一節『言ってみればぼ…

マイク・ハマーへ伝言/矢作俊彦

疾走する横浜青春グラフィティ。ちょっと知的な不良って、格好いいなと思う。70年代の横浜ってこんな感じだったのか。どん臭い東京の中学生だった頃だから良く分らないが、ある種スノビッシュな登場人物たちが生き生きしている。(スノビッシュといったら登…

邪魔/奥田英朗

「最悪」と同系列の作品。甲乙つけ難い。小市民の心情を書くのがうまいと思う。解説に、恭子を捉えて、「ある種爽快に道を間違えていく主婦」とあるのだが、「爽快に」というのが言い得て妙だ。悲劇的結末でありながら、全体として重苦しさをそれ程感じない…

ねむれ巴里/金子光晴

私には詩が分る素養がない。だから詩人のこともほとんど何も知らない。金子光晴で知っているのは「おっとせい」という一編の詩だけだ。 パリで貧窮生活を送る詩人のエッセイなのだが、詩人というものは経済力とか社会との適応みたいな所に重きを置かず、その…

神々の指紋/グラハム・ハンコック

冒頭から何やら胡散臭そうだと思ってしまったために、斜め読みをしたので、私に論評する資格はない。ただ、一言言えば、胡散臭くても面白く読める本もあるのだけれど、この本(というよりこの作者と言うべきかもしれないが)とは、相性が全く合わなかった。 …

山本周五郎「さぶ」の表紙が劇画調に

周五郎の「さぶ」は、私の大好きな小説だ。先日書店で平積みされていた新潮文庫の表紙を見て愕然とした。何だか訳のわからないPOPも立っていた気がするがもはや記憶にない。劇画調の表紙は、内容と全く不釣合い、全くミスリーディング。こんな表紙だったら私…

薔薇窓/帚木蓬生

1900年頃のパリ万博開催時のパリを舞台としたフランス人精神科医ラセーグと曲技団から売られた日本人娘音奴を主人公とするサスペンス・ロマン。主筋たる連続失踪事件や音奴の巻き込まれた事件のサスペンス/ミステリーとしての筋立ては甘いと言うべきだろうし…

勝者の混迷〜ローマ人の物語6・7/塩野七生

ポエニ戦争後カエサル登場までの、グラックス兄弟の改革、スパルタクスの乱、ポンペイウスの活躍などの時代。これらのエピソードはそれぞれ一つ一つで一冊の本になるのだろうけれど、つぼを押さえて簡潔に記述されていて、素晴らしいやら有り難いやら。マリ…

コインロッカー・ベイビーズ米国で映画化

http://www.excite.co.jp/book/news/00021120488467.html?l=1 なんとまあ。何考えてんだろ。ろくなものにはならないだろうな。好きな本だけにやめてくれっと叫びたくなる。どうせ見ないから関係ないけど。村上龍が監督してるわけじゃないから期待が持てるか…

パーク・ライフ/吉田修一

臓器を納めた人体のイメージが散りばめられる(日比谷公園も臓器で構成される人体に見立てられる)。といって、ホラー味があるわけでなく、カラッと乾いた雰囲気。そんな中で、主人公とスタバ女と、主人公と友人夫婦と、あるいは友人の夫婦関係自体の微妙な…

流言・投書の太平洋戦争/川島高峰

著者の文庫版あとがきによれば、高い評価を受けた本なのだそうなのだけれど、何だか中途半端な本だという感じが否めない。流言・投書という庶民の生の声が思ったより少なくて、戦争中の比較的常識的に知っているような出来事やら政府プロパガンダと事実との…

火の粉/雫井脩介

【ネタバレ注意】何だかよく分らんちん、へんちくりんな本。骨格となる設定に無理があるのか、あるいはそれを無理なく説明するための伏線がいい加減なのか。 夢中にして読ませる力のある本なのだけど、ずっとイヤ〜な感じがつきまとう。 武内って男は何のた…

光抱く友よ/高樹のぶ子

芥川賞受賞の表題作のほか、「揺れる髪」「春まだ浅く」の2編を収録。表題作は、大学教授の娘で優等生の主人公とアル中の母親を持つ貧しい不良少女との友情を、「揺れる髪」は母娘の関係を描く。心理描写がすばらしい。「春まだ浅く」は、愛と肉体を書くが、…

芥川賞・直木賞候補作発表その2

メッタ切りのお二人の予想。ふ〜ん。 http://www.excite.co.jp/book/news/00021120718626.html 芥川賞は、二人とも樋口直哉「さよならアメリカ」(群像)が本命。どんな本なのだろう。受賞したら、『服部栄養専門学校卒業。専門学校卒業後、レストラン勤務を…

芥川賞、直木賞候補作発表

http://www.bunshun.co.jp/award/akutagawa/index.htm http://www.bunshun.co.jp/award/naoki/index.htm 読んでみたいなと思うのは、絲山秋子「逃亡くそたわけ」くらいかな。芥川賞候補の方はほとんど知らない。

ボーン・コレクター/ジェフリー・ディーヴァー

「白仏」からの骨つながりで・・・。 このミスやら何かで高い評価を受けただけあって、ドキドキハラハラ楽しめる猟奇サスペンス。 主人公は、首から上と指一本しか動かせない天才鑑識官と美貌の新米巡査というなんじゃこりゃの設定で、また、この鑑識官リン…

白仏/辻仁成

この作者を読むのは、「海峡の光」、「ピアニッシモ」に次いで3作目。やはりいい。生と死を見つめる物語。一つ一つのエピソードが素晴らしく印象的に描かれている。この本が上梓されたのは97年のようだが、その後も数多くの作品が出ていて、どれから読んだも…