HONMEMO

読書備忘録です。

2012-01-01から1年間の記事一覧

アサッテの人/諏訪哲史

その企みが様々にあるにせよ、ちと、ついていけません。ポンパ。 本書で芥川賞受賞。 アサッテの人 (講談社文庫)作者: 諏訪哲史出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/07/15メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 16回この商品を含むブログ (12件) を見る

社会を変えるには/小熊英二

反原発官邸前デモなどにも参加している著者。デモに何の意味があるのか?デモより投票に行くべきではないか?と問われるという。私もデモに対しては懐疑的だ(だった)。本書は、デモだけでなく、ロビー活動や国民投票なども含めて、直接民主制的な参加の要…

その未来はどうなの?/橋本治

「分からないという方法」という著作のある著者が、「分からない」ことについて、「そのように分からなかったのか」に辿りつこうとする本であると。 取り上げられるのは、 テレビの未来 ドラマの未来 出版の未来 シャッター商店街と結婚の未来 男の未来と女の…

反ポピュリズム論/渡邉恒雄

反ポピュリズムというのは、エリート主義、官僚主義というに近いということでもある。 橋下徹大阪市長が掲げる「維新」は、スローガンが先行して政策の具体的な中身があやふやなところなど、パパンドレウの「変革」に似てはいないか。戦後日本の復興を牽引し…

清沢洌評論集/山本義彦編

清沢洌は、大正期から終戦前までのリベラル派のジャーナリスト・評論家。何でその名を知ったのだったか…。 外交目的は強硬にさえ出れば達せられる、外交の実があがらないのは強硬に出ないからだというのが、幕末からの一貫した民間常識であった。 (中略) こ…

草の上の朝食/保坂和志

プレーンソングの続編。このタイトルが、マネの「草上の昼食」の何やら不穏な雰囲気を想起させるように思うのは、私だけだろうか。 本書の創作ノート 草の上の朝食 (中公文庫)作者: 保坂和志出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2000/11メディア: 文庫 ク…

なずな/堀江敏幸

ひょんなことから弟夫妻の赤ん坊なずなを預かることになったコミュニティ紙の記者。赤ん坊は世界の中心で、人々をその引力で引き寄せてくる。これは赤ん坊を育てたことのある人(男でも女でも)にはたぶん馴染みのある感覚だろう。育児、赤ん坊のディテール…

うらなり/小林信彦

「坊っちゃん」という小説は、いわば、坊っちゃんが狂言回しとなったうらなり君と山嵐の悲劇という構造をもつと。なるほど。では、うらなり君の目から見ると「坊っちゃん」の物語はどのようになるか、延岡に飛ばされたうらなり君のその後の人生は…昭和9年に…

オートバイ/A.ピエール・ド・マンディアルグ

レベッカは結婚したばかりの19歳。夫が寝ているうちに素肌に黒革のレーサー服をまとい、恋人の元へとハーレー・ダビッドソンで驀走する。驀走するオートバイのリアル、かつての恋人との逢瀬(バラの花束で鞭打たれるなんてシーンもある)の回想のエロティシ…

タイタンの妖女/カート・ヴォネガット・ジュニア

独特の雰囲気があるSF。なんとなくアーヴィングに似たところがある気がするのだが。太田光の一押しで新装改版となったようだ。 タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫SF)作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,和田誠,浅倉久志出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2009…

劒岳/新田次郎

主人公は、測量官なる役人で、著者も気象庁の役人だったからか、その組織人としての悲哀みたいなものを書きたかったのかなとも思う。もっとドラマティックな構成にすることはできるのに…というところが、本書の良さでしょうか? 劒岳―点の記 (文春文庫 (に1-…

マキアヴェッリと『君主論』/佐々木毅

「君主論」に先だって、マキャヴェッリの伝記と当時のイタリアの政治情勢についてまとめられていて、理解に役立つ。 ビジネス書なんかで処世術的に取り上げられるのだろうけれど、こういう本は、本書のようなまじめな本で読むのが望ましいだろう。塩野七生も…

眠狂四郎無頼控(一)/柴田錬三郎

江戸時代、転び伴天連を父とするハーフという狂四郎の出自自体が凄い、だから狂四郎のハードボイルドっぷりは尋常でない。円月殺法もスゴイッ。 解説は遠藤周作。狂四郎は、ただのハードボイルド型主人公ではないと。 かつて改版前の第1巻だけ読んでいたのだ…

壬生義士伝/浅田次郎

NHK大河ドラマや映画にもなった新撰組もの…ではあるけれど、新撰組の華々しくも虚しい活躍を描くことを主題とした物語ではなく、武家社会の規範との相克と、真の義に生きようとする下級武士の家族愛を描く物語。やはり浅田次郎は通勤電車で読むのは大変。 解…

ひとり日和/青山七恵

芥川賞受賞。←石原慎太郎も◎か。ふーん。芥川賞らしいと言えばまあそんな感じ。追っかけて読もうといういう気はしない。 「出発」を併録。 ひとり日和 (河出文庫)作者: 青山七恵出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2010/03/05メディア: 文庫 クリック: 21…

けい子ちゃんのゆかた/庄野潤三

「子供たちが独立し、山の上のわが家に残された夫婦の豊かな晩年を描くシリーズ第十作」。その第何作か知らないけれど、かつて「せきれい」を読んだことがあって、その暖かい読後感に惹かれて、また本書を読んだのだけれど、いったいこの同じエピソードの繰…

成熟社会の経済学/小野善康

菅直人のブレーンらしいけれど、その政策とは異なるところも多い(当たり前だが)。 需要が不足する長期不況に陥っている成熟社会においては、増税してでも、環境、介護、観光といった役に立つ財政支出をすることが必要。これは、一方で増税の痛みがあるのに…

ある明治人の記録/石光真人編著

副題は、会津人柴五郎の遺書。会津藩は、明治維新に際して朝敵として討伐され、下北に移封される。著者はその頃まだ幼く、祖母、母、姉は自刃、下北では、極寒極貧の生活を強いられる。その後、様々なつてを頼って陸軍幼年学校(の前身)に入学し、のちに陸…

ミレニアム1〜3/スティーグ・ラーソン

3部作合計で、文庫版6冊3000ページに及ぶ長編エンターテインメント。謎解きミステリー、サスペンスドラマ、バイオレンスアクション、リーガルサスペンスなどありとあらゆるエンターテインメントの要素を盛り込んだ、著者の処女作にして絶筆の大作。 首から腰…

商店街はなぜ滅びるのか/新雅史

商店街の成り立ちを新書というメディアの制約はありつつも、多角的に丁寧に分析・説明している。ただ、これからどうするのかという提言部分は、「地域の協同組合や社会的企業に営業権を与える仕組み」とか「地域の協同組合に対して小売免許を与える」とか、…

ハーバード白熱日本史教室/北川智子

ハーバード白熱教室といえば、サンデル教授のコピーだが、サンデル教授の教室がディベートによって白熱するのに対し、北川講師(?)の教室は、エンタメ・プレゼン能力の競争により白熱する。特に、KYOTOの講義がそうだが、著者自身、「日本史」を教授するこ…

デフレの正体/藻谷浩介

生産年齢人口の減少、超高齢化の中で、内需を拡大していく対策を講じていくことが重要だと(マッツァリーノ氏のいう銀行系シンクタンクのスーぺーとはちょっと違う。)。 (著者が政府の審議会の委員のようなものを務めるようになったからか*1)高齢者からの…

反社会学講座/パオロ・マッツァリーノ

副題をつけるとすると、「いい加減のすすめ」といったところだろうか。依存のススメ、江戸時代礼賛的なところなど、斜に構えた物言いなれど、ものの見方を考えさせられるところがいろいろある。 スタンダード 反社会学講座 反社会学講座 (ちくま文庫)作者: …

看守眼/横山秀夫

表題作のほか、「自伝」「口癖」「午前五時の侵入者」「静かな家」「秘書課の男」 いずれもハッとするようなオチというかひねりがあって、短編の一つのお手本のような。 看守眼 (新潮文庫)作者: 横山秀夫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2009/08/28メディア:…

夜想曲集/カズオ・イシグロ

男女の危機を通奏低音とした短編集。 夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)作者: カズオイシグロ,Kazuo Ishiguro,土屋政雄出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2011/02/04メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 19回この商品を含むブログ …

清貧の思想/中野孝次

20年前のベストセラー。バブルが崩壊して、こういう本が読まれるけれど、モノの呪縛を解くのは容易ではなく。 いずれ徒然草をゆっくりと。西行も。 清貧の思想 (文春文庫)作者: 中野孝次出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1996/11メディア: 文庫購入: 3人 ク…

カンガルー日和/村上春樹

初期の短篇集。「図書館奇譚」は、世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドの習作のよう。 カンガルー日和 (講談社文庫)作者: 村上春樹,佐々木マキ出版社/メーカー: 講談社発売日: 1986/10/15メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 120回この商品を含むブロ…

農のある人生/瀧井宏臣

副題にベランダ農園から定年帰農までとあるように、国民皆が何らかの形で農と関わる「市民皆農」を提言する。団塊の世代が大量定年を迎える2007年問題などと言われた年から5年経って、「定年帰農」はどうなっているだろうか。地方の集落を支えるのはいずれに…

果てしなく美しい日本/ドナルド・キーン

1958年に英文で書かれた「生きている日本」のほか、2つの73年に行われた講演録を収める。 高度成長に向う頃までの日本の民俗、文化の概況。こういうものって、日本人は書かないだろうから面白いのだと思う。2つの講演録は、内容がほとんど同じ。 果てしなく…

東大教師が新入生にすすめる本2/文芸春秋編

丸山真男の人気が高いというイメージ。いくつかブックマーク。 東大教師が新入生にすすめる本〈2〉 (文春新書)作者: 文藝春秋,文芸春秋=出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/03メディア: 新書購入: 5人 クリック: 15回この商品を含むブログ (10件) を見る