HONMEMO

読書備忘録です。

歴史のダイヤグラム/原武史

副題は鉄道に見る日本近現代史。鉄道ファンである著者の個人史的なものも含まれているが、初出が朝日新聞日曜版に掲載されたコラムということで、肩肘張らないちょっと気の利いた読み物になっている。

72年の浅間山荘事件で政治の季節は終わったとも言われるが、順法闘争に起因する73年の上尾事件をはじめとする首都圏国電暴動からは、社会に対して異議があれば暴力的手段を使っても表明すべきというメンタリティがなお広く共有されていたことがみてとれると。

(なお、荒川鉄橋お召し列車爆破未遂事件とその爆弾が使われた三菱重工爆破事件は74年。荒川鉄橋で爆弾が使われていれば三菱重工爆破の悲惨は起こらなかったろうか?)

75年にはベトナム戦争も終わり、新左翼テロは自滅してシラケ世代を産む。また順法闘争は正当な権利であるストライキをはじめとする労働争議に対する嫌悪感を定着させた。

日本人は暴力的でないなどということはないのであって、高を括っているとあの時代が帰ってくるやもしれないなどと。