2014-01-01から1年間の記事一覧
訃報を聞いて積読山から引き出した。 安土城築城に取り組む棟梁父子を中心としたプロジェクトX。木曽檜の巨木の木曽川流し、石垣用の巨石の運び上げなどの手に汗握るアクション、ハニー・トラップなども含めたサスペンス、棟梁の子のビルドゥングス・ロマン…
終戦で国体は護持されたのか。そもそも国体とは何か。 水戸学の国体思想や文部省「国体の本義」は、君臣相和す世界(先祖に頭を下げる謙虚な天皇に国民が感激して心を一つにすること)が国体の根本特質であるとしており、このことからすると、象徴天皇制になっ…
古事記などに表れるスサノオやオオクニヌシの出雲王朝は、単なる神話か実在のものか。かつて、著者は「神々の流竄」で「大和に伝わった神話を出雲に仮託したもの」としていたが、本書では、荒神谷遺跡などの新たな考古学的発見、古事記、日本書紀などの成り…
人間の本性 政治 経済 日本人 教育 などについて、古今東西の著名人の言葉や文章を参照して、論評するもの。かなり長い文章もあり、箴言集という感じではない。悪の引用句辞典 - マキアヴェリ、シェイクスピア、吉本隆明かく語りき (中公新書)作者: 鹿島茂出…
初対面に近い京都人がよそさんに1から4のようにコーヒーを勧めた場合の正しい応答はそれぞれ次のようになるらしい。 コーヒー飲まはりますか。→ただの挨拶なので、「へえ、おおきに」と言って頃合いをみて帰る。(コーヒーは出てこない。) そない急かんでもコ…
自らの回想録の代わりに、自分がこれまで出会ってきた人たちについて、自分の心象風景を含めて何かを書くことはできるかもしれない、ということで書かれたものであると。 安東仁兵衛にはじまり丸山眞男に終わるというのがなるほどの基軸になっているが、一方…
中国は経済・軍事両面で米国と肩を並べる大国になる。 米国は、中国を最も重要な国と位置づける。 日本は軍事的に中国に対抗し得ない。 米国が日本を守るために中国と軍事的に対決することはない。 という現状認識の下で、紛争を防止、解決し、安全を確保し…
有機、あるいは自然農法でリンゴ栽培に取り組んだ、ちょっと、いやかなり変わったおっさんの記録。 スピリチュアル入っている感じがそもそも苦手だが、なんと言っても、ウェットな文体が好みでない。奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録…
食べられないために、病気にならないために、紫外線、暑さ、寒さに負けないように、子孫を残していくために、植物は様々な不思議な仕組みをもっている。 そこはかとなくユーモアも漂い、楽しくすごさを実感できる。少年少女にもおすすめ。植物はすごい - 生…
HONZで絶讃されていた書。 トースターをゼロから~鉄鉱石、銅鉱、石油(→プラスチック)などから(!)ほとんど自分の力だけで作ってみようというイギリスの大学院生が立ち上げたプロジェクト。 なかなか大胆というか、無計画で、プラスチックとか、ニッケル…
堀江敏幸のエッセイといえば、回送電車シリーズがあるが、本書がそれに位置づけられていないのは、短い独立したエッセイを集めたものでありながら、正弦曲線というコンセプトでくくられているためということだろうか。 日々を生きるとは、体内のどこかに埋め…
いろいろな意味で対照的なポジションにある2人の国会議員による 議員になるまで 国会議員としての仕事と生活 閣僚など政権内での仕事 についてのエッセイ(短い対談付き)。それぞれになかなか面白い。 選挙制度、統治機構のあり方は、真剣に議論されるべきだ…
以下の10人の家系をたどるノンフィクション。 小泉進次郎 香川照之 中島みゆき 堤康次郎 小沢一郎 谷垣禎一 オノ・ヨーコ 小澤征爾 秋篠宮紀子妃 美智子皇后 人の思いの集大成が人を作る。人は一代で作られるものではないとの思いを強くした。(あとがきより)…
グローバル金融資本主義批判の書。 "今日のグローバル世界の構造的な矛盾をもたらしているものは、…発展段階と文化や社会構造が異なった多様な国々が、まったく同一の画一化された世界に投げ込まれて競争にさらされているという点にある。" すなわち、"各国…
本書の結びにあるように、国際問題は、教育問題と同様、素人がテキトーに(知識、分析、経験に基づかずに)発言できる領域であるが、すっきりした意見や議論で理解できるものではない*1。本書は、そんな難しい(答えのない)国際問題、国際政治を考える際の考え…
戦時中、首狩り矮人族を追ってボルネオで行方不明となった民族学者を探す物語は、ボルネオのジャングルはもとより、熊野の山奥、チベット最深部あの空白の5マイルのツァンポー峡谷を舞台に、現実とフィクションのあわいを企み深く紡がれる。闇の奥 (文春文庫…
著者のブログは、たまにのぞいていた。本書もそうだが、その視点になるほどと思わせるところが、結構ある。 自己啓発本を読むことを批判する「自己啓発本」というのも、ユニークだわな。ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法作者: ちきりん出版社/…
クソ本は世に数多あるが、本書は、そういうクソみたいな本ではなく、クソについて真面目に考え、取り組んだ本。 まあ、つきあいきれん、という感じではあるが。本書を、ウェッと思うことなく読み通せれば、糞土師の愛弟子となれるであろう。くう・ねる・のぐ…
我が国生命科学の第一人者(先頃読んだ本の著者中村桂子の師)江上不二夫の言葉、人となりを弟子筋にあたる著者が噛み砕いて伝えようとするいわば「伝道」の書。 昨今、役に立つこと(特に短期的に経済効果が見込まれること)ばかりが求められているように思…
個性的な2人による仏像鑑賞。観念的な見方をするいとう、即物的な傾向のみうら。鑑賞はどこまでも自由。見仏記 (角川文庫)作者: いとうせいこう,みうらじゅん出版社/メーカー: 角川書店発売日: 1997/06メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 44回この商品を含む…
取り上げられる外交交渉は、 アメリカ独立 ルイジアナ買収 ウィーン会議 ポーツマス条約 パリ講和会議 エジプト・イスラエル停戦協定(第一次中東戦争) キューバ危機 レイキャヴィク首脳会談 著者の主観を交えず、交渉のドラマをコンパクトに整理している。 …
昭和の日本映画全盛期を支えたトップスターの一人、高峰秀子の半生記。 美女のものとは思えない男勝りの文体、勝気な、芯の通った生き方は、「渡世」日記というにふさわしい。 養母(親類、縁者も)とのバトルが凄まじいが、一方、谷崎潤一郎、梅原龍三郎、新…
時代を超えて、地域・文化を超えて、様々なキーワードで都市を縦覧する。面白いエピソードの紹介(カエサルは、渋滞対策のため、荷車の日中の往来を禁止し、市民に迷惑がられたとか)もあるものの、全体として焦点が定まらない、評論とエッセイの間のような文…
これはある意味「悪人」をより複雑にした変奏曲だな。 「悪人」が犯罪者と逃亡幇助者の美しい関係であるのに対し、本作は、「レイプでは加害者は許されるが、被害者は許されない」というやりきれない状況の中での加害者と被害者の間の愛憎という難しい設定に…
昨年亡くなった辻井喬(堤清二)の回想録。 経営と文学という水と油ほども異なる二つの分野で、超一流の業績を残したが、本書で次のように書かれていて、やはりなかなか簡単なことではないのだろうなと思う。 自分にも難解に見えた条件として、経営者である人…
筆者は、我が国生命科学の第一人者、JT生命誌研究館館長。 「人間は生きものであり、自然の中にある。」という認識を共有することによって、近代文明を見直し、新しい社会づくりを進めようとする提言。 こういう考え方って、広く表層的な共感は得られるのだ…
300万部を超えるベストセラーだそうだ。泣かせるラストはTV放送作家ならではのザッツエンターテインメント。ストーリーにもっとひねりがあるのかと思ったが、比較的ストレート。絶対に生きて帰ると言っていた宮部がなぜ特攻で死ぬに至ったのか、その葛藤を詳…
アラスカに身を埋めた明治の日本人フランク安田の物語。 北極海沿岸のエスキモーは、乱獲による鯨資源の減少、麻疹の流行で滅亡の危機に晒される。フランク安田は、ゴールドラッシュに沸くアラスカ中部ユーコン川沿岸へと彼らを導き、アラスカのモーゼと呼ば…