HONMEMO

読書備忘録です。

「低学歴国」ニッポン/日本経済新聞社編

教育の問題をさまざまな角度から取り上げている。

官僚養成機関だった東大から官僚を目指す人が減っている。大沢法学部長は、「学生の公共心は健在。ただ、現在では昔と違い、公共に関わる分野が民間を含む色々な方面に広がっている。進路の選択肢も増えた」と指摘する。一方、坂東真理子昭和女子大総長は、今の受験エリートにはノブレス・オブリージュの感覚がないと言う。どちらもそのとおりなのだろう。

日本では博士号を持つ人が極めて少ないが、世界では博士が産業革新を牽引している。冨山和彦氏によれば、米国大学院について「Ph.Dを取るまでの知的訓練は破壊的イノベーションそのものだ」という。博士という資格はイノベーションの能力の証だと。

なるほど。米国のジョブ型雇用の資格重視が博士の活躍を支えるのに対して、日本は、学問より社会経験を重視する一種の「反知性主義」や年功序列の仕組みなどが企業における博士の活躍を阻害してきた。今でもポスドク問題は何ら進展していないのではないだろうか。

工学部卒の女性は産業界から引く手あまたで、「人々が困っていることを技術で解決するのが工学。問題解決には、男性だけでなく女性のアイデアが必要」(染谷東大工学部長)であることは明らかだが、進路指導などでも選択肢から外されている感があるようだ。ダイバーシティ無くしてイノベーションなし。

総合型選抜が進み、ペーパーテスト偏重に伴う問題は改善されたが、一方でその受験生増加で丁寧な選考が困難となり、一般入試組の学生と比べて明らかに基礎学力が足りない学生が増えている。出口をきちんと管理しないと「入るのも出るのもやさしい」では日本の成長はないと。