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読書備忘録です。

コロナ後の世界を生きる/村上陽一郎編

2020年7月初版というコロナ禍の衝撃冷めやらぬ、先の見えない状況(初めての緊急事態宣言解除が5月25日、7月下旬から第2波)で上梓されたもの。もっと最近のものと思って借り出したのだが。

24人の提言が掲載されているが、印象に残った提言などをメモ。

村上陽一郎 科学的にはスウェーデンのように集団免疫(社会免疫)の獲得を目指すのが合理的だが、その獲得までの間の個人防衛にどれだけ力が注げるかが重要だと説く。このようなビジョンがもっと明確に打ち出されていれば、と思わないでもない。また、批判は重要だが、一方、人間は常にベストの選択ができる存在ではないとして「寛容」の重要性を指摘していることにも共感する。そういう意味でも、直前の黒木登志夫の批判だけをぶちまけた文章は好きになれない。

最上敏樹(国際法学者)  来るべき世界は、無用の敵対的競争を抑制し、自然とも和解し、人間が境界を超えて共生する世界であろう。それは他者と共に生き残ることを本気で構想する『利他的生き残り』の哲学に立ったものでなければならない。これが理想論というのなら、この状況に直面して、ネオ・リベラリズムやリアリズムは何かの役に立ったのかを問い直すべきだ。

藻谷浩介 コロナで日本は変わらない。行動変容というが、感染症を防ぐための生活習慣は基本的に変わっていない。コロナ後変わるとしても、インバウンド観光の再活性化、地方分権、経済機能の地方分散、女性の進出のリーダー層への拡大、手に職をつける教育の復権など伝統回帰的な現象が強まるのではないか。機能しない中央政府という伝統も。