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読書備忘録です。

政治学(ヒューマニティーズ)/苅部直

高大接続を意識した政治学(政治哲学)入門とのこと。高校教科書で、国民の政治参加により国民の意思が政治決定となるというすっきりとした構図で説明される政治は、実は肝心の「政治」そのものがすっぽりと抜け落ちている。その「政治」を考察する政治学の入門書。

そもそも政治とは何か、政治における自由(消極的自由と積極的自由)とは何か、現実を踏まえつつ理想を模索する政治的リアリズムとはどのようなことかなどについて、オーウェル司馬遼太郎丸山眞男福田恒存らも引用しつつ、分かりやすく説明する。

理想はそうでも現実は違うというのではなく、いろいろな可能性の方向を認識して選択するのが政治的選択であり、演技や偽善は、政治と重なるもの。

しかも、政治選択は「悪さ加減の選択」である。庶民の政治への無関心や冷笑的態度は政治への過度の期待から生じており、ベストの選択を期待する心理は、「強力な指導者による問題解決の期待」へと向かってしまう。