HONMEMO

読書備忘録です。

客観性の落とし穴/村上靖彦

本書の帯やキャッチコピーは、ややミスリーディング。ポイントは一人一人の経験、声から社会を、制度を作っていくことの重要性を説くもの。

科学の進展に伴い、客観性、数値に価値が置かれることにより、人間の序列化が進み、差別、排除の問題を生んでいる。また人々は競争に追いやられ、人間の個別性を消されて歯車になっている。

別の言い方をすれば、過度の数値化に伴い個別経験の生々しさを無視していることに問題がある。

個別経験の語りの生々しさの中に真理はあり、経験の個別性がもつ真理は、他の誰にとっても真理である(普遍性を持つ)のではないか。

そこで、一人一人の経験を尊重することから出発する世界を構想すると、排除される人がいない社会、お互いをお互いがケアしあう社会というものが浮かび上がってくる。そのような社会は、西成のような小さなコミュニティで生まれつつあるが、国家レベルのパラダイムチェンジが必要。