HONMEMO

読書備忘録です。

夜と霧/V・E・フランクル

今更ながら。

精神医学、心理学の古典という理解だったが、本書は人間とは、生きるとは何かということを突き詰めるいわば哲学書のようだ。

大方の収容者は、収容所を生き延びる(生きしのぐ)ことができるかということ、すなわち、生き延びられなければこのすべての苦しみには意味がないということで頭がいっぱいだが、著者は、この苦しみや死に意味がないとすれば収容所を生き延びることに意味などない、なぜなら収容所を抜け出せるかどうかに意味がある生というのは、その意味が偶然に左右されるわけだから、そんな生はもともと生きるに値しないと考える。

生きることの意味を問うことをやめ、生きることは、生きることの問いに正しく答え、各人に課す課題を果たし、時々刻々の要請を満たす義務を引き受けることであることを知るべきだ。生きることは常に、どんな状況でも意味がある、存在することの意味は苦しむこと、死ぬことも含むのだと。

生きることは、どんなに苦しい状況でも意味がある、というのは極限状態にある人に対する救いの、生き延びるための言葉になるだろう。いつでも、どこでも地獄を生きている人はいる。