HONMEMO

読書備忘録です。

進化的人間考/長谷川眞理子

我が国の進化心理学の第一人者による分かりやすい概説。

昨今は、性差についての研究は、性差別の問題と密接に関連するが故に議論が感情的となり、研究自体も減少しているという。人間の性差について客観的な評価は可能であり、研究者が偏見を持っていたとしてもそれを検証する手段を科学は持っている。差別を恐れて差異を認めようとしないのは科学的に不誠実であり、性差を十分検討する必要がある。

ヒトの適応進化環境は、長く続いた狩猟採集時代であり、基本的に雑食で、カロリー摂取はギリギリ、砂糖、脂肪、塩分はまれ。適度な運動が必要、子育てなども含めて共同作業で生計を立て、公正感を大事にするというもので、現代社会とはギャップがある。世界の歴史は、ヒトが新たな文化と社会を発明するたびに、適応進化環境からの逸脱が問題となり、その解決を迫られるという繰り返しだった。