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読書備忘録です。

保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである/福田和也

20年も前になるだろうか、石原莞爾の評伝「地ひらく」などを興味深く読んだ頃、著者は江藤淳の弟子的な立ち位置で保守文壇の寵児としてエネルギッシュに活躍していた。その後も「昭和天皇」といった大著もあったことを知っているが、久しぶりに見たのが本書でその書影の容貌の激変に驚いた。大病をされたらしい。

本書は、角川春樹石原慎太郎の人物評伝的エッセイのほかは、著者馴染みの飲食店のコロナ禍での実情を伝え、「保守とは横丁の蕎麦屋を守ること」「靖国神社より(すぐ近くの)南海キッチンを守る」という著者の基本的な保守のスタンスから、コロナに対応するための飲食店に対する営業規制を厳しく批判している。

一方、日本人が「治者」(何者かに保護されることを期待するのではなく、自らの責任と力量で共同体、事業などの安全、繁栄、存続を図ろうとする者)の倫理を失い、政府の言うことを唯々諾々と聞くことを嘆く(原因は国際社会の中で日本が被治者となったことにあると)。

そんな中、様々苦労して生き延びた著者が訪れた老舗飲食店は、紛れもない治者の姿だと。

著者の昔の面影を「日本人よ、治者となれ。」との最後の檄にみた。こう言う物言いは流行らないけど。