HONMEMO

読書備忘録です。

学術・教養

同調圧力/鴻上尚史、佐藤直樹

「世間」による同調圧力がコロナ禍の中で凶暴化している。 「世間」という強力な敵をよく知った上で、社会とつながる途をさぐること、あるいは、弱い「世間」を複数見つけて参加することが大事になると。 佐藤の指摘する「世間」(×社会)を構成する4つのルー…

不安定化する世界/藤原帰一

2011年から10年間にわたり朝日新聞に掲載された時事評論をまとめたもの。 原発事故直後のコラムでは、原発反対、推進の二者択一の中で、その危険性をどのように削減するかという政策課題が忘れられていることになぞらえて、核抑止に寄りかかる政府と軍縮交渉…

2020年6月30日にまたここで会おう/瀧本哲史

自分で考え、行動せよ。若者に向けた檄。著者は夭逝し、8年後の6月30日の答え合わせを自らすることはできなかったが、氏の講義や本を通じて多くの種が撒かれたということだろう。 実際に行動することはなかなかに難しいことだが、若者を応援しようと思わせる…

鴻上尚史のほがらか人生相談/鴻上尚史

長年劇団で様々なややこしい相談ごとにのってきた経験に裏打ちされているからこその回答、語り口。 読む本がなくなってかみさんが図書館で借りていたのを拝借して読む。 鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋 作者:鴻上 尚史 発売…

ドリーム・ハラスメント/高部大問

「夢を持て」をやめて「背中で語れ」という主張。 言いたいことは分からないではないが、文体がくどく感じてウンザリ。文体ハラスメントだわ。 ドリーム・ハラスメント 「夢」で若者を追い詰める大人たち (イースト新書) 作者:高部 大問 発売日: 2020/06/10 …

シン・ニホン/安宅和人

データ×AIの世界では全ての変化が指数関数的に起き、これから数十年で生産性が跳ね上がる。 日本は、この15年間一人負けを続けたが、生産性の伸び代は巨大であり、明るい未来を描くことができる。しかし、現状、データ×AIを活用する用意が全くできていない。…

デジタル・デモクラシーがやってくる!/谷口将紀、宍戸常寿

ICT、SNSにより情報提供等の戦略のあり方が大きく変化。政治コミュニケーションに関して、メリットもある一方で、フィルターバブル、フェイクニュース、政治家のスキャンダルの情報爆発などによる世論調査のボラティリティの高まりなどの問題があり、一般人…

絶望を希望に変える経済学/アビジット・V・バナジー、エステル・デュフロ

話題となった「貧乏人の経済学」の著者(ノーベル経済学賞受賞者)による、格差、貧困問題などの世界の課題についての見方、考え方、提言。 ・経済学(者)はなぜ信頼されないのか? →経済学者の意見が一般の意見とかけ離れている。例)米国が鉄鋼等に追加関税を…

白人ナショナリズム/渡辺靖

白人ナショナリズムといっても、 反移民系、反LGBTQ系、反イスラム系、クリスチャン・アイデンティティ系、ヘイト全般系、クー・クラックス・クラン系、男性至上主義系、新南部連合系、ネオナチ系、レイシスト・スキンヘッド系 など様々であるようだが、「リ…

捨てられる食べものたち/井出留美

副題は、食品ロス問題がわかる本。見開き1ページにやさしい文章とイラストで論点を整理。見出しだけでポイントが分かる。小学校の副読本などに良さそうな作り。 食品ロスとは、食べられるのに捨てられてしまう食べもの(魚の骨などもともと食べられない部分、…

事実vs本能/橘玲

週間プレイボーイ連載の時事コラムをまとめたもの。 ・国際成人力調査(PAAC)は、大人の読解力、数的思考力、ITを活用した問題解決能力の調査(2011〜12)だが、その結果はにわかに信じられないほどだ。 著者によるその結果のまとめは、やや言い方に難があるが…

コロナショック・サバイバル/富山和彦

・コロナ危機はL(ローカル)→G(グローバル)→F(ファイナンシャル)の順に襲う。 ・生き残りの鍵として、 1 最悪事態を想定し最善の準備を 2 Bad Newsを明らかにして信用毀損を恐れない 3 日繰りキャッシュ管理が全て 4 トリアージ経営 5 独断即決 6 法的整理も…

地元経済を創りなおす/枝廣淳子

これからの日本にとって何より大事なのは、地域経済の活力を取り戻すことだ。 そのためには、地域でビジョンを立て、地域経済の状況を把握し、地域にお金を持ってくることよりも地域から出ていくお金を少なくして(漏れバケツの穴を塞ぐ)、地域内乗数効果、地…

人口減少社会のデザイン/広井良典

これからは、第3の定常化の時代であり、限りない拡大・成長とは異なる新たな社会、価値のありようを形成していくべきとして、時代認識、理念について検討するとともに、様々な方策を提示している。あとがきのまとめから、具体的方策に係る部分を要約、メモし…

2100年の世界地図/峯陽一

2100年、人口で4割づつを占めるアジア、アフリカ=アフラシアは、否が応にもその存在感を増す。アフラシアは、西欧植民地支配を受けていた地域であるが、その内部に覇権的振る舞いを懸念される大国がいくつかある(中国、インド、日本、ナイジェリア、エジプト…

古事記 100分で名著/三浦佑之

古事記は、日本書紀と異なり、ヤマト政権の正統性を示すために編まれたものではない。 古事記には、北方系(弥生系)の神話要素もあるが、南方系(縄文系)の民俗や文化要素が濃厚。出雲神話は日本書紀ではわずかしか取り上げられない。 古事記は、聖徳太子が律…

日本の近代とは何であったのか/三谷太一郎

英国ジャーナリスト、バジョットの「近代」概念に照らして、日本の近代の特質を明らかにしようとするもの。 すなわち、東アジアで独自の「議論による統治」を創出し、「貿易」=資本主義化を進めて「植民地化」による帝国を出現させた日本の「近代」の意味を…

民主主義は不可能なのか/宮台真司・苅部直・渡辺靖

宮台、苅部、渡辺による「週間読書人」での2009〜2018年の年末回顧鼎談。民主主義など政治、社会、経済思想的観点からの時事評論と書評。 ・トクヴィル「多数派の専制」 個人が孤独化・原子化していくと小さなコミュニティに依拠できなくなり、見えない権力…

"意識高い系"がハマるニセ医学が危ない!/桑満おさむ

表紙がおちゃらけているが、中身はまとも。 問題なのは、著者も指摘するとおり、この手の本は読むべき人が手に取らないこと。また、手に取っても考えを変えようとしないばかりか、自らの考え方に周囲を同調させようとすること。 本人が困るだけならいいが、…

韓国 内なる分断/池畑修平

韓国の政治は、北朝鮮との分断という歴史を背景に、国内的にも保守派と進歩派に分断され、厳しく対立するという状況が規定している(南南葛藤)。 分断は、帝王的大統領制度と幅広い政治任用が助長している面があり、「大統領選挙の翌日から次の選挙を睨んだ権…

東大留学生ディオンが見たニッポン/ディオン・ン・ジェ・ティン

シンガポールからの東大留学生による体験的言語論・コミュニケーション論・ニッポン論。 ジュニア新書らしい、ティーンに読んで欲しい書。 ・今の日本では出る杭は打たれる。→多様性が拡大すれば(多様性の認識が深まれば)杭が出ているかどうかは重要でなくな…

見えない戦争/田中均

ポピュリズムから、情報を的確に収集・分析・評価して「大きな絵」を描くプロフェッショナリズムへの回帰を主張する憂国のパンフレット。 著者が携わってきた対米国、中国、韓国、北朝鮮外交について、著者の考える大きな絵をザックリ知ることができる。 見…

世界地図を読み直す/北岡伸一

JICA理事長として訪れた国々について、その国情を紹介しつつ、国際協力、外交のあり方について考察したもの。 南スーダンで国民スポーツ大会を開くとか、法整備を支援するとか、協力にもいろいろある。 世界地図を読み直す:協力と均衡の地政学 (新潮選書) 作…

日本社会のしくみ/小熊英二

雇用慣行を中心とする日本の社会の成り立ちの分析。以下備忘メモ。 日本社会は、大企業型、地元型、残余型の3類型でできている。 大企業型は、正社員、終身雇用といういわゆる日本型雇用。日本社会の3割。 地元型は、地元から離れない、農業、自営業など。社…

プログレッシブキャピタリズム/ジョセフ・E・スティグリッツ

アメリカ経済についての提言。グローバリズム、市場支配力の問題、政府の重要性など。トランプになってますますだけれど、アメリカってのはなかなか特殊な国。 経済がグローバル化しているだけに、アメリカが本書の提言を容れたような政策に転換すると、日本…

反知性主義/森本あんり

アメリカで理解しにくいものは、テレビ伝道師の絶大な人気と医療保険や銃規制にすら反対する政府不信だ。これらはアメリカという国の成り立ちと深い関係がありそうだということがわかる。 本書の主題は、アメリカのキリスト教を背景として生まれた反知性主義…

美学校1969-2019/美学校編

この学校のことは全く知らなかった。初年度の講師陣に赤瀬川原平、澁澤龍彦、巌谷國士、唐十郎、種村季弘、埴谷雄高らがいたというのはおどろくばかり。会田誠、Chim↑Pomらも講師を務めている。他にも恐らくはわたしが知らないだけであろうこの方面で有名な…

「家族の幸せ」の経済学/山口慎太郎

経済学とは、「人々がなぜ・どのように意思決定し、行動に移すのかについて考える学問」であるので、結婚、出産、子育て、家族の幸せも対象となる。カネに関係なくとも。そうなんだ。 結構当たり前じゃないかということが多いのだが(もちろん、へえ〜と思う…

暴走する日本軍兵士/ダニ・オルバフ

著者はイスラエルの若手研究者。明治以来(維新、佐賀の乱からニニ六事件まで)の日本軍軍人の不服従の歴史を英語で書いたものは、本書が初めての試みであるという。ただ、日本人にとっては、大枠で常識的な内容なのではないかな。 暴走する日本軍兵士 帝国を…

作家と楽しむ古典(5)/松浦寿輝ほか

松尾芭蕉ー松浦寿輝 与謝蕪村ー辻原登 小林一茶ー長谷川櫂 近現代俳句ー小澤實 近現代詩ー池澤夏樹 作家と楽しむ古典シリーズの第5巻 奥の細道は、歌枕を訪ねる旅。古今和歌集や新古今和歌集が芭蕉に旅され、詠まれることで、その土地には文学的な記憶が再充…