HONMEMO

読書備忘録です。

学術・教養

老人支配国家日本の危機/エマニュエル・トッド

・トランプ、ブレグジットは、自由貿易から保護貿易への回帰、民主主義の失地回復を体現するもの。(新)自由主義(サッチャー、レーガン)もそれからの転換も英米により主導。 アングロサクソンの絶対的核家族に内在的に備わっている個人主義的で不平等に寛容な…

横浜の名建築をめぐる旅/菅野裕子・恩田陸

横浜の名建築案内。 知っている建物は多いけれど、建築を見るという目で見ないと何も見えていないということがよく分かる。 横浜の名建築をめぐる旅 作者:菅野裕子,恩田 陸 エクスナレッジ Amazon

無と意識の人類史/広井良典

現在、 1 人間の生の有限性 2 地球環境あるいは経済社会の有限性 に向き合わざるを得ない時代状況にある。 世界の人口・経済規模は、拡大・成長と定常化というサイクルを3回繰り返しており、定常化への移行期において、革新的な思想や観念が生成(量的拡大か…

悪党・ヤクザ・ナショナリスト/エイコ・マルコ・シナワ

幕末の志士のイメージを借り、自由民権運動の活動家となる壮士やその海外版である大陸浪人は、政党の院外団などとして政党システムに取り込まれ、その暴力担当を担う(イデオロギーに関心のない博徒、ヤクザの暴力も政治に大きな影響があった)。(院外団は、暴…

Weの市民革命/佐久間裕美子

株主利益の最大化を図るのでなく、従業員、コミュニティ、サプライヤー、ベンダー、顧客なども含めた全てのステイクホルダーとともに価値を共有する資本主義、ステイクホルダー・キャピタリズムへのシフトが重要であり、その実現に向けて様々な活動が始まっ…

安いニッポン/中藤玲

かつて日本の物価は世界一高かったが、今やディズニーもダイソーもビッグマックも、日本の物価は世界一安い。サンフランシスコでは年収1400万円は低所得というように賃金水準の差も広がる。物価が安いのは賃金が上がらず、購買力が下がり、価格を上げられな…

もし「未来」という教科があったなら/未来科準備室

未来科準備室というのは、河合塾の山本康二、山本尚毅と月刊高校教育編集担当二井豪による編集チームとのこと。HONZレビュアーの山本尚毅は河合塾で「未来研究プログラム」という仕事をしているとか。受験テクニック教育の極北というイメージの河合塾がそん…

貧困のない世界を創る/ムハマド・ユヌス

マイクロファイナンスで知られるグラミン銀行を創設し、2006年ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス博士が自らの経験をもとにソーシャル・ビジネスを語るもの。受賞直後今から15年ほど前の著作。 ソーシャル・ビジネスには2種類ある。 ・最大利益を追求…

経済学は人びとを幸福にできるか/宇沢弘文

「社会的共通資本」は以前に読んだが、読書の中で最近宇沢弘文の名前や社会的共通資本への言及がいくつかあって、ちょっと復習。 社会的共通資本は、ヴェブレンの制度主義(資本主義と社会主義を超えて人間の尊厳が守られ、魂の自立が保たれ、市民的権利が最…

コーヒーで読み解くS DGs/川島良彰・池本幸生・山下加夏

コーヒーとSDGsといえば、生産国における児童労働や貧困が連想されるのだが、本書はそういう問題点があることも指摘しつつ、むしろ、コーヒー産業が生産国の経済や社会に貢献し、また様々なSDGsに沿う取り組みが行われていることを紹介して、そういった取り…

宇宙は何でできているのか/村山斉

素粒子物理学をわかりやすく説くものとして著名な本。第2章の素粒子の標準模型のあたりまではなんとかついていったが、そのあたりで集中力が落ちてわけわからない状態に。 標準模型で電磁気力と弱い力が統一されそうだが、そこに強い力も含めた「大統一理論…

読書大全/堀内勉

(ビジネス)リーダーに求められる読書はいわゆるビジネス本を読むことではなく、本書に掲げられているような古典であることは疑いなかろう。 人類の残してきた古典の位置付けの解説をした上で、その概略を記すという建て付けになっている。 なかなか今から古…

日本列島回復論/井上岳一

地方と低所得者への雇用機会の提供を通じた再分配と減税による中所得者層への所得還付という土建国家モデル(稼ぎがセーフティネット)が破綻、セーフティネットが空洞化する中で、人とのつながりと山水の恵み、それを生かす手業・知恵が揃うことによって、安…

政治と報道/上西充子

・国民の間にわかりづらいとの声がある。 ・〜という指摘がありますが、受け止めを。 ・(野党は・・・と批判した、でなく、)「野党は反発」。 といったような紋切りですませる報道の堕落。 政局報道より、論点に沿った国会報道をするべきだ、という主張はそ…

記憶する体/伊藤亜紗

健常者としての記憶が刻まれた体で障害のある体を生きる人は、一つの物理的な体の上で、健常者と障害者の体が重なり、固有のパターンを生み出す。多重人格ならぬ多重身体。そのありようは様々。幻肢、幻肢痛は、脳が記憶している手や足の動きと現実の手や足…

政治改革再考/待鳥聡史

平成を通じて行われた選挙制度、行政、日銀・大蔵省、司法制度、地方分権に及ぶ広範かつ大規模な政治改革は、憲法に規定される公共部門のあり方を転換する明治、戦後に次ぐ第三の憲法体制を作り出したと評価しうるもの。 このような改革の背景には、80年代に…

「三代目」スタディーズ/鈴木洋仁

「三代目」は、ウジ社会(血縁のみでつながる)とイエ社会(頻繁な養子縁組によって続く)、さらにはムラ(無原則かつ繋がりがない)の交わるところに位置するがゆえに、旧弊にだけ囚われるのではないが、新しいルールにのみ従うのでもない「あてどなさ」を特徴と…

13歳からのアート思考/末永幸歩

アート思考とは、自分の内にある興味をもとに、自分のものの見方で世界を捉えて探究すること。(アーティストとは、興味のタネを自分の中に見つけ、探究の根を伸ばし、表現の花を咲かせる人。) VUCA(volatility,uncertainty,complexity,ambiguity)ワールドに…

陰謀史観/秦郁彦

陰謀史観というよりは、主として日米関係150年史の中の陰謀論を分析、検証したもの。田中上奏文、コミンテルン陰謀説、田母神史観など。陰謀論は、無節操と無責任の故にいつの時代にも栄えると。 陰謀史観 (新潮新書) 作者:秦 郁彦 発売日: 2012/04/17 メデ…

人新生の資本論/斎藤幸平

人間の活動の痕跡が地球の表面を覆い尽くす地質年代「人新生」は、気候危機の時代。 資本主義の進展は、グローバルノースにおける大量生産、大量消費による豊かな生活(帝国的生活様式)と、グローバルサウスにおける搾取、環境負荷の外部化を生む。人新生は、…

歪んだ正義/大治朋子

副題は「普通の人」がなぜ過激化するのか。 過激化のステップ 1 私的な苦悩、政治・社会的不正義への疑問や怒り→確証バイアスなどによる思い込みの強化 2 ナラティブ作り 共感する物語の取り込み 3 過激化トンネル 被害者意識の形成→外集団の非人間化→不正義…

女性のいない民主主義/前田健太郎

政治学において、ジェンダーは、環境、人権、民族というような政治的「争点」として扱われてきたが、本来、いかなる政治現象を説明する上でも用いることのできる視点である。ジェンダーの視点に基づく議論をこれまでの標準的な学説と対比してみると政治の世…

還暦からの底力/出口治明

・数字、ファクト、ロジック。エピソードでなく、エビデンスで世界を見る。 ・高齢者は次世代のために働くことに意味がある。 ・ヤング・サポーティング・オールドではなく、オール・サポーティング・オール ・みんなで社会を支える=消費税。困っている人に…

武器としての決断思考/瀧本哲史

自分の人生は、自分で考えて、自分で決めていくべし。その意思決定に当たって不可欠なディベートの思考法・技術指南。 武器としての決断思考 (星海社新書) 作者:瀧本 哲史 発売日: 2011/09/22 メディア: 新書

新しい世界史へ/羽田正

現行世界史の問題点は、 1 日本人(○国人)による世界史であり、共通の世界史がない。 2 現行の世界史は、ある人間集団と他の人間集団の区別を強調する。(イスラーム世界などと違いを強調するのではなく、自らの問題として捉え、共通性に注目する歴史理解と叙…

しびれる短歌/東直子・穂村弘

様々な心象風景や想いなどをぎゅっと凝縮して短い言葉に詰め込んだ短歌(や俳句)は、優れた水先案内人によって展開して言語化してもらうことでより豊かに心に響くことが多い。 本書により改めて現代短歌に触れて心豊かになる思い。 しびれる短歌 (ちくまプリ…

同調圧力/鴻上尚史、佐藤直樹

「世間」による同調圧力がコロナ禍の中で凶暴化している。 「世間」という強力な敵をよく知った上で、社会とつながる途をさぐること、あるいは、弱い「世間」を複数見つけて参加することが大事になると。 佐藤の指摘する「世間」(×社会)を構成する4つのルー…

不安定化する世界/藤原帰一

2011年から10年間にわたり朝日新聞に掲載された時事評論をまとめたもの。 原発事故直後のコラムでは、原発反対、推進の二者択一の中で、その危険性をどのように削減するかという政策課題が忘れられていることになぞらえて、核抑止に寄りかかる政府と軍縮交渉…

2020年6月30日にまたここで会おう/瀧本哲史

自分で考え、行動せよ。若者に向けた檄。著者は夭逝し、8年後の6月30日の答え合わせを自らすることはできなかったが、氏の講義や本を通じて多くの種が撒かれたということだろう。 実際に行動することはなかなかに難しいことだが、若者を応援しようと思わせる…

鴻上尚史のほがらか人生相談/鴻上尚史

長年劇団で様々なややこしい相談ごとにのってきた経験に裏打ちされているからこその回答、語り口。 読む本がなくなってかみさんが図書館で借りていたのを拝借して読む。 鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋 作者:鴻上 尚史 発売…